3D CADの本格運用に際して直面する「データ管理」に関する現場課題にフォーカスし、その解決策や必要な考え方を、筆者の経験や知見を交えて解説する。第6回は「共通部品の管理をPDMシステムで行うにはどうしたらいいの?」をテーマに、PDMシステムにおける共通部品の管理について取り上げる。
前回は“3D CADからPDM(Product Data Management/製品情報管理)システムへの3D CADデータ登録の流れ”について解説しました。
PDMシステムを用いて3D CADデータを共有化する場合、データベースへの登録が伴います。しかし、PDMシステムを利用する設計者の立場から見ると、“データベースへの登録”を意識することなく、単にデータを保存するかのように使用できます。
ただ、PDMシステムの利用は簡単であっても、取り扱う3D CADデータは重要な会社の資産ですので、その運用管理は慎重に行わなければなりません。
一般的にPDMシステムを導入する場合には、PDMシステムベンダーから、
といった導入/立ち上げに向けたサポートを受けつつ、以下の内容を検討していきます。
PDMシステムは、3D設計情報管理を行うだけでなく、生産管理システムといった他のシステムとの連携も担う企業の中核システムといえます。そのため、運用ルールの整備が非常に重要となります。また、運用開始後にそのルールを頻繁に変更するといったことも避けるべきです。運用ルールの整備や徹底をしっかりと行わないと、3D CADデータの整合性が保てなくなったり、他システムとの連携に支障を来したりなど、トラブルの原因につながります。
というわけで、今回は「PDMシステムにおける共通部品の管理」をテーマに解説を進めていきます。
【シーン1】
設計者A:購入品や汎用(はんよう)部品といった共通部品は、PDMシステム内でどうやって管理したらいいのかな? 他の部品データと同じでいいのだろうか……。
標準部品といわれるJIS規格のネジ、ボルト、ナットや、加工部品ではないモーター、エアシリンダー、センサー類、そして、カタログから型式で購入可能なミスミなどの標準加工部品について、PDMシステムでどのように管理するのかを考えます。
図1は、PDMシステムにおけるフォルダ構成の一例です。ご覧のような位置に標準部品のフォルダや購入品のフォルダを配置しています。
基本的に、フォルダ構成は設計環境に合わせた構成をとりますが、この例では、PDMシステムのキャビネット直下の階層に、「iCAD」用の保存領域として「01_iCAD SX」フォルダを設けています。そして、その下の階層に標準部品データのフォルダ「01_標準部品」を設置し、さらにその下に「01_JIS」フォルダを設けてボルトやネジ、ナットといったフォルダを配置しています。また、「01_標準部品」フォルダ以下の「01_JIS」と同じ階層に、「02_購入品」フォルダを設置して、その直下にモーターやセンサーなどのフォルダを置いています。
「01_標準部品」と同じ階層に位置する「02_製品」フォルダは、その直下に装置分類別のフォルダを持ちます。フォルダ配下にプロジェクト(青色フォルダ)を作成し、ここに3D CADデータを格納します。ちなみに、このプロジェクト配下にはフォルダやプロジェクトは作成できません。このような構成は、製品カテゴリーを意識したもので、例えば、筆者の勤める企業の製品では、「ラビング装置」「塗布貼合装置」「塗布幅可変スリットコータ」といった分類で構成されます。
この例では、標準部品フォルダが製品フォルダと同じ階層にあるので、“各装置をまたがって標準的に使用する部品ライブラリを構成”することを意識しています。製品は、その改訂や機種に応じて部品形状の変更が行われますが、共通部品は基本的に変更はありません。
このようなことから、共通部品に関しては、誰が登録できるのかを決めるとともに、登録を承認された人でも自由に変更できないようなPDMシステムへの承認フローを検討する必要があります。その理由は、3D CADアセンブリファイル(組立図)における“リンク”にあります。
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