講演では、Joby Aviationが開発したeVTOLのテストフライト(2019年に実施)の映像を紹介。ヘリコプターのように離着陸したり、空中停止(ホバリング)したり、プロペラを前に傾けて加速したりする様子を示した。
クラーク氏によると「1回の充電による航続距離は最長約240km、最高時速は約320kmで、運航時のCO2排出もない」という。また、エアタクシーの利用を想定しており、パイロット1人+乗客4人の計5人が搭乗可能になっている。クラーク氏は「われわれは10年以上前からeVTOLの開発を進めるとともに、ビジネスモデルやマーケット戦略についても繰り返し検討してきた。その結果、現在の“空中ライドシェアネットワーク”のビジネスモデルに行き着いた」と述べる。
彼らが目指すのは、空と陸をシームレスに統合したモビリティサービスの実現だ。クルマやバイク、電車といった複数ある既存の交通手段と、eVTOLを統合した新たな移動の在り方のイメージとして、クラーク氏は大阪駅から関西国際空港への移動を題材に紹介した。通常の電車での移動の場合、到着まで1時間ほどかかるが、Joby AviationのeVTOLであれば約14分で到着できるという。「eVTOLであれば、湾に沿って迂回(うかい)することなく、直線的に目的地に向かうことが可能だ。この例の場合、約45分の時間を節約できる。同じように直線的なルートの交通インフラを整備するとなると膨大なコストがかかる」(クラーク氏)。
市場参入/社会実装のハードルは当然あるが、Joby Aviationは機体の開発とともに規制当局との連携も進めており、米国では小型のプロペラ飛行機による定期便およびチャーター運航を認可する米国連邦航空規則(FAR:Federal Aviation Regulations)Part 135を取得。日本の国土交通省航空局(JCAB)や英国の民間航空安全庁(CAA)に対しても型式証明の取得に向けた取り組みに力を入れている。なお、Joby Aviationは2022年10月18日にJCABに対して型式証明申請を行ったことを発表(関連リンク[1])している。
日本国内では「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」をターゲットに“空飛ぶクルマ”の実用化に向けた第一歩を踏み出そうとしている。Joby Aviationは2022年2月15日にeVTOLを活用した日本における新たな運航事業の共同検討に関する覚書をANAホールディングスと締結しており、地上交通における連携においては出資企業であるトヨタ自動車も参加することが発表(関連リンク[2])されている。また、2022年10月18日には、国土交通省が空飛ぶクルマに関する制度整備においてFAAとの連携を強化するため、「空飛ぶクルマに関する協力声明」への著名を行ったことを発表(関連リンク[3])しており、2025年の大阪・関西万博での空飛ぶクルマの商用運航開始に向けた各種制度の整備や準備が急ピッチで進められている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.