業務効率化の道具箱(5)Google Testを使ってみよう【その1】山浦恒央の“くみこみ”な話(158)(3/3 ページ)

» 2022年10月20日 07時00分 公開
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6.動作確認

 上記の5項で導入したツールが正しく動作するか確認します。今回は、以下の絶対値を求めるプログラムを例題として進めます(リスト1〜3)。

//引数valueが0より小さい場合は、valueの絶対値を返す
#include "myabs.h"
int myabs(int value){
	if (value < 0){
		value = value * (-1);
	} else {
		return value;
	}
	return value;
}
リスト1 myabs.cpp
int myabs(int value);
リスト2 myabs.h
//Google Test側のプログラム
#include <gtest/gtest.h>
#include "myabs.h"
int main(int argc, char **argv){
	//Google Testの初期化
	::testing::InitGoogleTest(&argc, argv);
	//テスト実行
	return RUN_ALL_TESTS();
}
TEST(AbsTest, Value){
	//-5を入力し、絶対値が5となることを確認する
	EXPECT_EQ(5, myabs(-5));
}
リスト3 gTestMain.cpp

 リスト1〜3は、絶対値を求めるプログラムのテスト例です。リスト1と2は、入力した引数の絶対値を求めるプログラムで、リスト3は、Google Testのテストコードになります。

 Google Testでは、「InitGoogleTest」で初期化処理を記述し、「RUN_ALL_TESTS」でテストを実行します。「EXPECT_EQ」と記述することで、入力と出力が一致するか確認できます。今回は、myabs(-5)を実行します。期待値は5なので、きちんと5が返ってくるか確かめます。

6.1 Google Testの実行確認

 下記のコマンドを実行し、Google Testが実行できるか確認します(リスト4)。

g++ myabs.cpp gTestMain.cpp -lgtest -lgtest_main
./a.out
リスト4 確認用のコマンド

 ./a.outを実行すると、図2の出力結果が出ることを確認します。

図2 図2 実行結果

 図2は、プログラムの出力結果です。「./a.out」を実行して、実行結果の左側に緑の文字が出ていれば、正しい出力結果であると確認できます。なお、赤の字になると、期待値が一致していないことを表しています。

6.2 gcovの確認

 次は、gcovの動作確認をします。

 gcovの確認をするには、リスト5に示すコマンドを実行します。

g++ -fprofile-arcs -ftest-coverage myabs.cpp gTestMain.cpp -lgtest -lgtest_main
./a.out
gcov -b a-myabs.gcda
リスト5 gcovの実行コマンド

 g++のオプションに「-fprofile-arcs -ftest-coverage」を追加して実行すると、「.gcda」ファイルを出力します。その後、「gcov a-myabs.gcda」を実行することでカバレッジデータを出力します(図3)。

図3 図3 gcovの実行結果

 図3は、gcovの出力結果です。「Line executed:80% of 5」と書いてあり、C0:80%は網羅できていることが分かります。

 ちなみに、gcdaファイルなどがある状態で、再度実行しようとすると、エラーが出るので、削除しましょう。削除するコマンドは以下です。

rm *.gcda *.gcno

6.3 lcovの確認

 gcovは、カバレッジの計測値は分かっても、どの行が未到達パスか確認するのが少し困難です。以下のコマンドを実行し、未到達パスを確認します。

lcov -d . -c --rc lcov_branch_coverage=1 -o LcovData.info
genhtml LcovData.info --branch-coverage -o ./info

 コマンドを実行すると、InfoフォルダにHTMLファイルを出力します。フォルダ内の、index.htmlを確認しましょう。一通りの出力結果が入っています。今回は、その中にあるmyabs.cppを開いてみましょう(図4)。

図4 図4 lcovレポート[クリックで拡大]

 図4は、lcovのカバレッジレポートです。青が到達済みのパスで、赤が未到達パスであると確認できます。結果を見ると、Line(C0カバレッジ)が80%で、Branch(C1カバレッジ)が50%であると分かりますね。

7.終わりに

 今回は、「ツールの導入」に着目し、Google Testとgcov/lcovの環境構築と簡単な動作確認を実施しました。単体テストは、地味で面倒な作業を淡々とこなさねばなりません。有償/無償を問わずツールを導入し、効率化をご検討ください。

 世の中には、さまざまなツールが存在します。「この業務を効率化したい」と思ったとき、みんな同じように考えていて、効率化できるツールが必ずあります。ツールを使った問題解決を一つの選択肢として考えていただければと思います。

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【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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