日本精工(NSK)は金型などの加工面品位を向上させる次世代高精度工作機械用ボールねじを開発したと発表した。「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)で展示する。2023年4月に受注を開始し、2024年に同製品シリーズの売上高として1億円を目指す。
日本精工(NSK)は2022年10月5日、オンライン会見において金型などの加工面品位を向上させる次世代高精度工作機械用ボールねじを開発したと発表した。「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)で展示する。2023年4月に受注を開始し、2024年に同製品シリーズの売上高として1億円を目指す。
近年、5軸加工機などに代表される工作機械では、高精度化や効率化、自動化、環境対応などが求められており、工作機械の位置決め用途に使われるボールねじには重切削対応や高速化対応、長期安定稼働などの機能が要求されている。今回の製品は高精度化による高面品位の向上や磨き作業の削減、環境対応につながる低トルクを実現する。
通常、ボールねじはモーターの駆動を受けて回転し、テーブルなどを移動させる。ただ、モーターの動力が一定でもテーブルが動く距離はさまざまな影響を受けて常に変化している。そこで、エンコーダーでテーブルの位置やモータの回転数を測り、実測値をモーターにフィードバックして微調整を行うクローズドループ制御が行われている。
ただ、ボールねじの運動方向反転時には摩擦特性が急激に変化して、フィードバックによる調整が追い付かず、象限突起と呼ばれる運動誤差を生んでいた。金型などの加工面に筋状の跡が生じることがあり、それを除去するための磨き加工の手間が発生していた。
象限突起は2山(2カ所)発生する。1山目については既に工作機械側の制御で補正が可能となっているが、2山目はさまざまな要因が複雑に影響していることから誤差が一定にならず、制御による補正も困難だった。
今回、日本精工はリアルデジタルツインと呼ばれる開発手法を活用して、これまで厳密に解明されていなかった運動方向反転時の摩擦特性を解明することに成功し、運動方向反転時の摩擦変化を小さくする象限突起対策に最適な内部仕様を開発した。
リアルデジタルツインは解析技術などを駆使して現象の内部を詳細に可視化し、内部で起きているからくりを推理、解明して新しいソリューションの発想を図る日本精工独自の開発手法だ。日本精工では2020年から製品開発に活用しており、リアルデジタルツインを用いてこれまでに世界初の転がり軸受用「バイオマスプラスチック保持器」や電動車駆動モータ用「高速回転玉軸受Gen3」、高負荷駆動用ボールねじ向け長寿命化技術を開発してきた。
運動方向転換時の動摩擦トルクの変化を最小化したことで、抑制が困難だった2山目の象限突起の抑制することができ、動摩擦トルクも従来製品と比べて最大20%低減した。また、取り付け周りの寸法は従来と変わらず、既存の機械にそのまま取りけることできる。加工物の高面品位化を実現し、磨き工程の廃止や削減が可能になる。モータへの負荷も小さくなり、省エネルギーにも貢献する。
日本精工が出展するJIMTOF2022のブースで披露する予定となっており、新製品と従来品との反転時のトルクの違いを体感できる展示などを検討しているという。
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