リュウグウより小さい直径わずか30mの小惑星へのタッチダウンは可能か?〜拡張ミッション【後編】〜次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(21)(3/4 ページ)

» 2022年09月07日 08時00分 公開
[大塚実MONOist]

ターゲットマーカーが使えない?

 そして2031年7月には、はやぶさ2の最終目的地である小惑星「1998 KY26」に到着する。この天体は直径30m程度と非常に小さく、約10分という周期で高速に自転していることが大きな特徴。過去、地球に接近したときにレーダーで観測した例があり、ジャガイモのような丸い形をしていることが分かっている。

小惑星「1998 KY26」の形状モデル 小惑星「1998 KY26」の形状モデル。はやぶさ2と比較するとその小ささが分かる 出所:Auburn University、JAXA

 ランデブー時、探査の拠点となる場所が「ホームポジション」である。天体に近過ぎると衝突する恐れがあるし、推進剤の消費量も増える。かといって、離れ過ぎると観測や接近に不便だ。探査でリスクのある挑戦ができるのも、安全な拠点があってこそ。安全性を最大限確保しつつ、距離を適切に設定する必要がある。

 リュウグウでは、ホームポジションは距離20kmのところに設定されていた。1998 KY26の直径は30分の1ほどであり、重力の影響は極めて小さく、重力だけ考えれば距離は200mほどで構わない。しかし一方で、リュウグウのときとほとんど変わらないのが、太陽光圧による影響である。

リュウグウでのホームポジション リュウグウでのホームポジション。1km立方の仮想的な箱(図ではBOX-A)の中から出ないよう探査機を運用する[クリックで拡大] 出所:JAXA

 リュウグウでの運用では、探査機は太陽光圧で流され、数100mオーダーで動いていたという。もしホームポジションを200mに設定すれば、この影響により、小惑星を一時的に見失ったり、最悪の場合は激突する恐れも出てくる。24時間体制で監視するのも難しいため、ホームポジションは数km程度離すことになりそうだ。

 そして無事ホームポジションに到着したら、はやぶさ2は何をするのか。可能性の1つとして期待したいのはタッチダウンだ。もちろん、タッチダウンに成功したところで、もはやサンプルを地球に持ち帰ることはできない。しかし、ここで実証した新たな技術を、今後のプロジェクトに生かすことはできる。

 はやぶさ2のタッチダウン方式では、目印として「ターゲットマーカー」を使用する。未使用のターゲットマーカーが1個残っており、1998 KY26でも使うことができるのだが、ここで問題となるのは、重力の小ささ。1998 KY26は高速に自転しているため、重力より遠心力の方が強く、天体表面に静止させられないのだ。

はやぶさ2に搭載された「ターゲットマーカー」 はやぶさ2に搭載された「ターゲットマーカー」。地表に投下して目印にする[クリックで拡大] 出所:JAXA

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