全社視点で見ても素晴らしい効果がありそうですね。でも、導入する上で懸念事項や課題は無いのでしょうか?
先ほどの説明で技術情報管理のルールが統一化されると言いました。まさにこの統一化が問題になる可能性があります。
部品番号(品番)のルールを統一するケースを考えてみましょう。A事業部で扱う品番の桁数は10桁で、F工場の生産管理システムもそれに合わせて最大10桁だとします。しかし、B事業部の品番は12桁です。するとF工場はB事業部のBOMデータを取り込めないことになります。
こうしたさまざまなトラブルが発生しかねないので、グローバルPLMの実現には、あらかじめ業務プロセスの標準化を含めたルール統一などの準備が必要になるのです。
とすると、グローバルPLMというのは単なるIT導入にとどまらず、海外拠点も含めた企業内のルールやプロセス改革にまで踏み込んだ話になりそうですね。
その通りです。図表2を見てください(※)。これはデジタル化の段階を定義したものです。この中でDXが登場していますが、自社だけでなく、顧客やサプライヤーを巻き込んだ変革として定義されていて、グローバルPLMはその例として取り上げられています。
※:本連載第2回図表の再掲
経営者がリードしていかなければならない、全社レベルでの改革になるというわけですね。このグローバルPLMというのが、今回のプロジェクトで考えるべき重要なテーマだということが改めて分かりました!
それは何よりです。今回は、グローバルレベルの事業部から生産工場への流れについて解説しましたが、次回は、生産工場で発生したSCMや実績情報の事業部へのフィードバックについて触れていきたいと思います。では、次のセッションでお会いしましょう。
⇒連載「DX時代のPLM/BOM導入」バックナンバー
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧
三河 進
株式会社グローバルものづくり研究所 代表取締役
大阪大学基礎工学部卒業。
大手精密機械製造業において機械系エンジニアとして従事後、外資系コンサルティングファーム、大手SI会社のコンサルティング事業を経て、現職に至る。
専門分野は、製品開発プロセス改革(3D設計、PLM、BOM、モジュラー設計、開発プロジェクトマネジメントなど)、サプライチェーン改革、情報戦略策定、超大型SIのプロジェクトマネジメントの領域にある。また、インターナショナルプロジェクトにも複数従事経験があり、海外拠点のプロセス調査や方針整合などの実績もある。
・「図解DX時代のPLM/BOMプロセス改善入門」,日本能率協会マネジメントセンター(2022)
・「5つの問題解決パターンから学ぶ実践メソッド BOM(部品表)再構築の技術」,日本能率協会マネジメントセンター(2018)
・「製造業の業務改革推進者のためのグローバルPLM―グローバル製造業の課題と変革マネジメント」,日刊工業新聞社(2012)
・「BOM/BOP活用術」,日経xTECH(2016)
・「グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント」,ITメディア社MONOist(2010)など多数
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