オムロンは現場データ活用基盤「i-BELT Data Management Platform」(i-DMP)を開発し、同日より現場データ活用サービス「i-BELT」に組み込んで提供することを発表した。
オムロンは2022年8月18日、現場データ活用基盤「i-BELT Data Management Platform」(i-DMP)を開発し、同日より現場データ活用サービス「i-BELT」に組み込んで提供することを発表した。2025年度(2026年3月期)にi-BELTを含むソリューション事業全般で500億円以上の売上高を目指す。
オムロンでは2017年からi-BELTを展開している。同社の幅広い制御機器製品群と豊富な現場経験を生かし、工場にあるさまざまな機器から得られるデータと顧客の持つ知見を掛け合わせて、製造現場の革新を共創で進めていくサービスだ。既に60社ほどが導入しているという。
その中で、i-BELTをよりスピーディーに提供し、課題解決ソリューションの継続的な進化に貢献するデータ活用基板基盤としてi-DMPは開発された。工場、フロア、ラインといったエッジ領域を中核に、コントローラーや装置、センサー、クラウド領域にある基幹システムをつなぐ。
i-DMPの大きな特徴は3つ挙げられる。まず、多様なネットワークやリージョナルデータベース(RDB)、FA機器と簡単に接続でき、既存システムを最大限活用できるほか、各社のPLC情報など現場に点在するデータを必要に応じてエッジ領域でリアルタイムに収集、蓄積して一元管理できる。
「顧客の課題として、現場データ収集のために既存の設備を入れ替えるのはコストがかかり、生産そのものに影響を与えるので避けたいという声もあった。一方で、データ収集の仕組みを個別で開発すると、開発期間が長くかかってしまう。基本的なデータ収集の仕組みをパッケージ化することでこれらを簡単に短期間で実現できるようになる」(オムロン)
通信プロトコルはOPC-UA、Ethernet/IP、PROFINET、Edgecrossなど、RDBはPostgreSQL、Oracle Database、Microsoft SQL Serverなど、制御機器はコードリーダ、産業用カメラ、パーティクルセンサーを含む多様なFA機器が接続対象になっている。
また、秒単位、ミリ秒単位といったリアルタイムレスポンスに対応できる低遅延なデータ共有の仕組みを有している。50種類以上の豊富なマネジメントソフトや部品を活用することで、エッジ領域で収集したデータを現場課題に合わせてリアルタイムな状況の可視化を実現する。
さらにi-DMPは柔軟なデータベース構造を持っており、対象ラインやデータの拡張、マネジメントソフトの変更にも対応でき、改善目標の変更など製造現場の継続的な改善活動に貢献する。独自のマネジメントソフト開発環境も備えている。
i-DMPは既に障がい者を雇用する大分県別府市のオムロン太陽、京都府京都市のオムロン京都太陽に導入。オムロン京都太陽では作業者の今この瞬間を把握し、“いつもと違う”といった大きな変化のある状況に素早く対応するための仕組みをi-DMPも活用して構築した。
作業ラインに設置した動作を取得するセンサーと、天井に吊り下げたカメラの動画から製品の完成情報と作業者の情報を取得、工場のサーバには生産計画や品番情報を蓄積されており、それらのデータと組み合わせて現場の状況をリアルタイムに見える化した。
作業の進捗状況が把握できるようになり、異常を発見した場合には状況を動画で即座に確認することで、何が起こったのか原因を把握できるようにした。その結果、設備停止の復旧時間の短縮などにつながり生産性が11%向上した。システム構築の時間は従来のやり方に比べて8分の1まで削減できたという。
オムロンでは今後、i-DMPのライセンスによるパートナー企業への提供も検討している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.