MONOist 今後、サプライヤーとの協働を深める上で、どのような点が大事になると考えますか。
入江氏 地元企業の脱炭素が進まなければ、大みか事業所のスコープ3の排出量削減も進まない。だが、地元企業にはスコープ1、2の排出量削減をどう進めればよいか分からないというところもある。その点をうまく支援していく必要がある。
もう1つが、原材料や部材など調達した製品のカーボンフットプリントをどのように把握するかも考えなければならない。サプライヤーのCO2排出量の実績値を可視化する取り組みも進めている。ただ、現時点では地元の代表的な企業を中心に可視化の協力を依頼し始めたところで、今後どのくらいの協力者を得られるかは不透明だ。
そもそも、製品単位でのCO2排出量の算定ルールがまだ社内で決まっていない、という地元企業も存在する。業界や製品カテゴリーごとに、何らかの統一的な算定ルールがなければならないとも思う。
ただ、データ収集の仕組みなど、当社から統一的な指針を何かしら示すという考えは今のところない。JEITA(電子情報技術産業協会)の「Green x Digitalコンソーシアム」での議論や、欧州のCatena-Xをベースとしたデータ流通の仕組みづくりなどを参照しつつ、大みか事業所に適したCO2排出量開示の仕組みを検討していきたい。
MONOist 大手企業を中心にカーボンニュートラル実現を目指す動きが広がる中、脱炭素に取り組まないサプライヤーは、将来的に取引を停止されるリスクもあるといわれています。
入江氏 大企業同士の取引ではなく、大企業と中小企業の間では力関係が変わる。こちらが一方的に脱炭素の要求を押し付けても対応が難しいだろうし、脱炭素推進に伴うコスト転嫁などに悩むことになってしまう。当社から脱炭素推進のノウハウを提供しつつ、コストについては産官学の連携でカバーする方法を考えるなど、「ネットワーク」全体で課題に取り組んでいく機運を作りたい。
MONOist 大みかグリーンネットワークでの取り組みの成果は、将来的に日立グループ全体に広がっていくのでしょうか。
入江氏 事業所によって最適な脱炭素の取り組みは異なる。大みか事業所は大量生産ではなく多品種少量生産を主軸としている。同じ日立グループでも、例えば自動車用部品を手掛ける日立Astemoの事業所とは、少し事情が異なる。事業所のある地域によっても最適な進め方は違ってくるだろう。
ただ、その中でも、他所の脱炭素においても参考になる取り組みを進めたいとは考えている。地域の取り組みは、ネットワークの機軸をどこに置くかが大事だ。幸いにして、大みか事業所は地域に根差して、さまざまな団体や機関と連携できる立場にある。大みか事業所は1969年設立と古い工場だが、それでもここまでやれるのだと発信して、活動の輪を広げていければと考えている。
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