ドックスを開発する上では課題もあった。その1つが高品質のPPとそれ以外の素材をいかに高精度、かつ効率よく分別していくか、という点だ。先述の通り、ドックスでは比重分離機に加えて、光学式選別機を使うことでこの問題に対処した。ポイントとなるのが、光学式選別機を採用した点である。この機械は、本来、精米において米のキズや変色、虫食いを検出する用途で用いられているものだ。
当初、ダイトクでは素材を効率よく分別するために、比重分離後に素材を乾燥させてから振動で分ける、組成判定の仕組みを用いて正確に分けるなど、さまざまな方法を検討していた。しかし、ダイトク 東日本事業部 執行役員 事業部長の星山朋弘氏は「試してみたが、いずれの方法もコストや精度の面で採用が難しかった。一度溶かして網でアルミニウムなどを除去することも考えたが、処理過程でのCO2排出量が増加する懸念があり、見送った」と振り返る。その中で有力候補として、たまたま見つかったのが光学選別機だった。サイズ感もドックスに組み込む上で良いあんばいだと感じられたという。
ただ、光学選別機の取り扱い業者に相談すると、「そうした用途で活用した例がない」と導入を断られてしまった。そこで別の業者に話を持って行ったところ、「ペットボトルのラベルを分離するために活用している顧客事例があって、当社の想定用途でも活用できるかもしれないということで、実装に向けて話が進んだ」(星山氏)という。
この他にも、ドックスの実稼働に向けてはクリアしなければならない課題が幾つかあった。例えばテストの段階では、破砕機をすり抜けていた異物がポンプ内に引っ掛かかってしまう問題が発生したため、再発を防ぐために試行錯誤を繰り返した。「ドックスの粉砕物投入口に網を張り、引っ掛かるものがないかを目視確認する他、磁石を設置して金属の混入を防ぐ取り組みも進めた」(星山氏)。課題を1つずつクリアして、1年半に及ぶテストの後、ドックスは本格稼働を開始した。
もちろん、トラブルを防ぐ上では、粉砕物を提供する側であるシードの協力も不可欠だ。シードでは、工場から出るごみからアルミニウムを取り除くシステムを採用するなど、対策を講じている。さらに、従業員の意識改革も進めており、シード 生産管理部 設備管理グループ 課長の土橋亮氏は「粉砕物はもともと産業廃棄物として処分していたので、現場は『何を捨ててもいい』と認識している面があった。そのため、有価物として提供する上でNGなものをごみに含めないよう、従業員に周知徹底した」という。これらの施策は実際に効果が出ており、効率の良いプラスチックの分別につながっているようだ。
シードはプラスチックのリサイクルを同社のカーボンニュートラル実現に向けたプロジェクトの1つと位置付けている。鴻巣研究所においては、使用電力を100%太陽光発電に切り替えるなどの取り組みを進める。同研究所を置く埼玉県からのCO2排出量の削減要請についても、毎年目標値を大幅に上回り達成しているという。
同社は今後もBLUE SEED PROJECTを通じて、廃プラスチックやCO2排出量の削減に取り組み、サーキュラーエコノミーの実現を目指す計画だ。
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