半導体不足や中国のロックダウンなどサプライチェーンの混乱が続いている。日系乗用車メーカー8社が発表した2022年5月の生産台数では、スズキと日産自動車を除く6社が前年割れとなった。4月に比べて減少幅は改善しているものの、前年実績が低水準だったことが要因で、本格回復とは言い難い。
半導体不足や中国のロックダウンなどサプライチェーンの混乱が続いている。日系乗用車メーカー8社が発表した2022年5月の生産台数では、スズキと日産自動車を除く6社が前年割れとなった。4月に比べて減少幅は改善しているものの、前年実績が低水準だったことが要因で、本格回復とは言い難い。中国では6月からロックダウンが順次解除されたが、世界的な半導体不足は依然として深刻な状況が続いており、自動車メーカー各社は生産計画を下方修正せざるを得ない状況となっている。
日系乗用車メーカー8社合計の2022年5月のグローバル生産台数は、前年同月比0.2%減の162万1866台と3カ月連続で前年実績を下回った。減少幅は前年実績並みまで戻したものの、コロナ禍前の2019年5月との比較では3割以上のマイナスであり、本格回復とは程遠い状況だ。
中国でのロックダウンがさまざまな影響を及ぼした他、半導体不足が足を引っ張る格好が続いており、8社合計の国内生産は同16.0%減の39万6433台と10カ月連続で減少した。なお、海外生産は同6.3%増の122万5433台と3カ月ぶりにプラスへ転じたが、これはスズキがインドで前年5月に急激な感染拡大により長期間稼働停止した反動などが主な要因だった。
4月に続き、5月もメーカー間の温度差が大きく、グローバル生産の順位が大きく変動した。トヨタ自動車に次ぐ2位は、2カ月連続でスズキ。3位ホンダ、4位日産と続く。マツダは依然として厳しく、8社の中で最下位となった。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 144,204 | 490,736 | 152,741 | 146,812 | 634,940 |
▲ 28.5 | 4.6 | ▲ 3.2 | 13.7 | ▲ 5.3 | |
スズキ | 59,318 | 191,769 | - | - | 251,087 |
5.2 | 190.8 | - | - | 105.3 | |
ホンダ | 37,285 | 207,083 | 82,514 | 79,636 | 244,368 |
57.7 | ▲ 21.0 | ▲ 22.6 | ▲ 27.1 | ▲ 14.5 | |
日産 | 26,799 | 204,933 | 74,310 | 80,642 | 231,732 |
77.9 | ▲ 3.7 | ▲ 4.2 | ▲ 12.6 | 1.7 | |
ダイハツ | 28,905 | 43,511 | - | - | 72,416 |
▲ 54.5 | 1.9 | - | - | ▲ 31.9 | |
三菱 | 25,148 | 39,571 | - | 223 | 64,719 |
4.4 | ▲ 11.9 | - | ▲ 96.0 | ▲ 6.2 | |
スバル | 40,123 | 24,154 | 24,154 | - | 64,277 |
6.5 | ▲ 15.4 | ▲ 15.4 | - | ▲ 2.9 | |
マツダ | 34,651 | 23,676 | 8,756 | 9,625 | 58,327 |
▲ 30.2 | ▲ 10.6 | ▲ 15.6 | ▲ 17.5 | ▲ 23.4 | |
合計 | 396,433 | 1,225,433 | 342,475 | 316,938 | 1,621,866 |
▲ 16.0 | 6.3 | ▲ 10.2 | ▲ 8.9 | ▲ 0.2 | |
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、% ※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計 |
メーカー別に見ると、トヨタの5月のグローバル生産台数は、前年同月比5.3%減の63万4940台と2カ月連続で前年実績を下回った。減少幅は4月から3.8ポイント改善したが、中国のロックダウンや半導体不足など部品調達難の影響が広がっている。このため5月のグローバル生産は当初計画比10万台減の75万台としていたが、それをさらに下回る結果となった。
中でも厳しいのが相次ぐ稼働停止を余儀なくされた国内生産で、同28.5%減の14万4204台と3カ月連続のマイナス。減少幅も4月より19.5ポイントも悪化した。なお、国内工場の稼働停止は6月以降も断続的に続いており、このため国内販売ではモデルサイクルなどの関係から受注を停止する車種が一気に増加。新車ディーラーでは販売可能な車種が一部に限られるという事態に発展しており、納期の長期化による事業への影響が深刻化している。
一方、海外生産は、前年同月比4.6%増の49万736台と2カ月ぶりのプラス。地域別では、中国がロックダウンによる稼働停止などが発生しているものの、前年5月が「アバロン」の生産移管に伴い台数を絞っていたため、同13.7%増と2カ月ぶりに増加した。また、マレーシアやインドネシア、インド、ベトナムなども増加した結果、アジアトータルでも同11.5%増となった。その一方、北米は、部品供給の逼迫により同3.2%減と2カ月連続で減少した。
4月に続き2位につけたのがスズキだ。5月のグローバル生産は、前年同月比105.3%増の25万1087台と倍増し、3カ月ぶりにプラスへ転じた。グローバル生産台数で2桁%を超える高い伸びを見せたのはスズキだけだ。
要因はグローバル生産の半数以上を担うインドで、前年5月が変異株による急激な感染拡大で医療用酸素が不足し、工業用酸素を医療向けに提供するために半月以上稼働を停止したことで、同302.8%増と4倍まで急伸し、3カ月ぶりに増加した。その結果、海外トータルでも同190.8%増の19万1769台と、2カ月連続のプラスとなった。
国内生産も、前年同月比5.2%増の5万9318台と3カ月ぶりのプラス。中国からの部品調達難や半導体不足などにより「エブリイ」や「キャリイ」を生産する磐田工場で稼働を停止したが、国内生産全体では前年を上回る生産を確保した。
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