ダッソー・システムズは年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催(会期:2022年7月6〜26日)。本稿では、基調講演の中から同社 代表取締役社長のフィリップ・ゴドブ氏の講演「新たな視界から、世界と向き合う」の内容をお届けする。
ダッソー・システムズは2022年7月6〜26日までの期間、年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催。“SDGs時代のものづくり 〜バーチャルツインでつながる、持続可能なイノベーション”をテーマに、基調講演の他、ドメイン別/インダストリアル別の約60ものセッションを展開し、同社の取り組みや戦略に加え、ユーザー事例講演など多数の情報発信が行われた。
本稿では、基調講演の中から同社 代表取締役社長のフィリップ・ゴドブ氏の講演「新たな視界から、世界と向き合う」の内容をお届けする。
講演の冒頭、ゴドブ氏は「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、企業の成長、存続をかけた基盤づくりの機会をもたらすものだ。大量生産、大量消費が当たり前だった20世紀のやり方はもはや許されるものではない。これからは、最も効率的なユースケースシナリオを特定し、科学、芸術、技術を駆使して製造の在り方を変革していく必要がある。SDGsを、われわれの未来を創造する好機と捉えるべきだ」と強調。また、イノベーションの創出においても、「現状維持の考え方からは生み出すことはできず、現状打破に努めることで、はじめてイノベーションが可能になる」と説明する。
同社は、同社のビジネス&イノベーション基盤「3DEXPERIENCEプラットフォーム」によってもたらされるバーチャルなモノづくりが、サステナビリティ(持続可能性)を実現する破壊的イノベーションを支えるとし、電気自動車(EV)や風力発電設備、太陽光を利用した航空機の開発など、新たな製品開発に広く貢献しているとする。
また、ゴドブ氏は、単なるクルマの枠にとどまらない“未来のモビリティ”を例に挙げ、「その開発にはさまざまな専門分野の知見が必要になる。3DEXPERIENCEプラットフォームであれば、複数の専門家や関係者によるリアルタイムコラボレーションを可能にし、より良い製品、より良い世界を実現するための可能性を切り開き、掲げた目標を着実に達成することができる」と述べる。
特に、さまざまな規制対応や未来のモビリティの在り方を模索し続ける自動車産業は激動の中にあるとし、リアルな世界とバーチャルな世界をつないで相互で高め合い、製品ライフサイクル全体をつなげ、それらを見渡しながら皆でコラボレーションできる3DEXPERIENCEプラットフォームの果たす役割は大きいという。
SDGs時代における製造業のあるべき姿に関して、ゴドブ氏は「製造業各社は、バランスの取れたアプローチで、環境への悪影響を軽減し、製品ライフサイクルの全行程においてカーボンハンドプリント(自社製品によってどれだけ炭素の排出を防げたか)を把握する必要がある」と述べ、ここでも3DEXPERIENCEプラットフォームの活用が有効であることをアピールする。
さらに、脱炭素化と循環型経済(サーキュラーエコノミー)の推進には、システムオブシステムズのアプローチが必要だとし、「バリューチェーンにおけるバーチャルツインエコシステムと、コラボレーティブプラットフォームによってそれが実現可能となる」(ゴドブ氏)という。
バーチャルツインに関して同社は、科学的に正確な数値に基づくコンピュータモデルによって実現する「バーチャルツイン・エクスペリエンス」を提唱している。バーチャルツイン・エクスペリエンスは、あらゆる場面のサステナビリティの最適化に貢献するとし、例えば、研究開発における物理試験が不要となったり、製品開発に伴う試作やその廃棄から解放されたりなど、どのようなアイデアも実行前にバーチャルでシミュレーションすることができる。
その他にも、理想的な稼働率の工場や物流の最適化の実現に活用したり、材料情報などをバーチャルツインに取り込むことで、リサイクルや修理業務などに役立てたりなど、バーチャルツイン・エクスペリエンスはさまざまなシーンでの活用が見込めるという。
講演の最後、ゴドブ氏はあらためて「SDGsは企業の成長と存続のための基盤づくりの機会をもたらすものだ。ダッソー・システムズは、バーチャルツイン・エクスペリエンスを活用したコラボレーションの実現を、各企業が掲げる主要戦略に据えることを提案する。目標達成に向けて現状打破に努めれば、より良い世界のための新たな可能性を切り開くことができるだろう。バーチャルツイン・エクスペリエンスを活用すれば、現実の世界を広げ、高めていくことができる」と述べる。
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