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» 2022年07月05日 08時00分 公開

【ケース2】図面の改訂管理が全くできていない……設計現場のデータ管理を考える(2)(1/3 ページ)

3D CADの本格運用に際して直面する「データ管理」に関する現場課題にフォーカスし、その解決策や必要な考え方を、筆者の経験や知見を交えて解説する。第2回のテーマは「図面の改訂管理が全くできていない……」という状況を取り上げつつ、図面改訂管理およびPDMの重要性を説明する。

[土橋美博/プレマテック,MONOist]

 前回から“3D CADデータをいかに管理/運用するか”というテーマで、「PDM(Product Data Management/製品情報管理)」について解説を始めました。PDMは、開発設計業務におけるデータ管理を行うための基本的かつ重要なシステムであり、現在、さまざまなツールベンダーからPDMシステムが提供されています。

 PDMシステムの導入コストやランニングコスト(保守契約費用やサーバ維持費)は、決して安価なものではありません。いざ運用が開始されれば、恒久的に使用されますので、PDMシステムは慎重に選定すべきです。また同時に、PDMシステムの導入/立ち上げ前には、現行のデータ管理運用をしっかりと見直し、問題点や課題を明確にしながら、PDMによる新たな運用方法やルールを整備する必要があります。

画像はイメージです ※画像はイメージです(iStock/Bubushonok)

 筆者自身、PDMシステムを数年かけて立ち上げた経験があります。その経験の中で、うまくいったこともあれば、思い通りにいかなかったこともたくさんありました。その難しさを端的に言えば、「PDMの運用方法は必ずしも1つではない」ということです。3D CADの使い方やデータ構成などを見てもそのルールは各社各様ですし、データ管理の方法もさまざまです。そのため、うまく自社にマッチしたPDMシステムの活用法を見いだすことが重要だといえます。

 本連載では、これまで筆者が実際に経験してきた失敗事例などを基に、その解決アプローチを提示します。本連載を通じて、PDM活用の理解を深め、PDMシステムの導入/立ち上げにお役立ていただければ幸いです。

 さて、前回は「どうする!? 3D CADデータの管理」と題し、3D CADデータ管理の“あるべき姿”を取り上げました。今回は「図面の改訂管理が全くできていない……」という状況を取り上げつつ、図面改訂管理およびPDMの重要性を解説していきます。

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ケース2:図面の改訂管理が全くできていない……

 では、「図面の改訂管理が全くできていない……」状況を示す2つのシーンを見てみましょう。まずはシーン1です。

【シーン1】
製造担当A:「この部品、前回製作時に修正してるはずだけど、どうして直ってないの?」

設計担当B:「元図を改訂していませんでした……」

製造担当A:「今すぐ、前回同様の修正部品を製作して!!」

 これは、図面の改訂管理ができていない典型的な現場のやりとりです。同様のシーンを筆者も設計者として何度も経験してきました。何らかの理由で、製造時に緊急対処の必要性が生じ、出図図面に手書きで修正を入れたものの、その修正を元図となる紙図面やCADデータへ反映しなかった(反映を怠った)ことで起こった問題です。

 設計者自身、ミスをするつもりはなかったものの、リピート製作時にこのような事態が判明すると、製造(組み立て)現場からのクレームを受けるばかりか、製造スケジュールの遅延にもつながりかねません。短納期化が進む今日では、再調達などの遅延は重大な問題となります。

 続いて、シーン2を見てみましょう。

【シーン2】
製造担当A:「この部品、前回製作時のものから修正されているけど、修正前のデータはある?」

設計担当B:「調べてみたのですが、3D CAD上では上書きされているようで、分かりません……」

 手描き図面では、例えば、部品の寸法が修正された場合、改訂前のサイズに取り消し線を引き、改訂後のサイズを記入するため、改訂前の数値を確認することが可能です。また、2D CADでは組立図が上書きされたとしても、部品図には改訂記号が記されるため、その履歴を把握することができます。では、3D CADではどうでしょうか。シーン2のように、3D CADでは図面の改訂管理が難しいのでしょうか。うまくいかない理由はどこにあるのでしょう(その理由は後述します)。

 1つ言えることは、いずれのシーンも、図面改訂に対する設計ルールが徹底されていなかったことが問題の原因となります。3D CADの導入検討時などに、設計部門がこれまでの問題を認識し、課題の対策を施していれば、図面改訂に対する設計ルールの整備やその定着も図れ、問題を回避することができたでしょう。しかし、こうしたルールの整備/定着に向けた取り組みが抜けてしまうと、3D CAD導入を進めても根本の問題は残っていますので、同じようなトラブルが繰り返されることになります。

 以上のような図面改訂管理の問題を解決し、図面変更と改訂の運用方法の改善を支援してくれるのがPDMです。

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