aiwaが手掛けなかったデジタル機器で「aiwaらしさ」を表現したい――。JENESISがこだわったのは日本のユーザーの要求に耐え得る品質とデザインだ。
設計面では耐久性や防水防塵(じん)にこだわり、フラグシップモデルの製品には液晶パネル保護に強化ガラスを採用するなど、ヘビーユースに耐え得る仕様にした。そのこだわりを下支えしたのは、JENESISが長年培ってきた日本企業向けの開発ノウハウと、深センでのサプライチェーンマネジメントだ。
低価格を重視する製品になると金型の費用がネックとなり、一からの設計/デザインができない。深センではパーツやモジュール単位のノーブランド品が流通しており、それらを組み合わせることで調達コストと製造にかかる期間を短縮できた。しかし、そういった市場に流通する部品は同じ性能でも品質のバラツキが多く、日本向け製品に採用するには品質保証と調達のノウハウが欠かせない。
JENESISでもそういった深センのサプライチェーンを独自の目利きで活用してきたが、aiwaデジタルのプロジェクトでは筐体からゼロベースで設計。中国のサプライチェーンを生かしつつも、オリジナル商品としてこだわるべき部分は妥協しなかったという。
特にこだわったのは、日本人好みの薄さとデザインだ。日本では薄型の需要が強く、法人向けの製品においても堅牢性やバッテリー耐久性と並んで、薄さや軽量性が重視されていると指摘する。この薄さを実現するための工夫は細部に及んだ。
「各通信キャリアに対応できるようバンド(周波数帯)やアンテナ感度を調整しつつ、ノイズ対策も施した上で、薄さを追求するというのは非常に難しい。筐体が大きくても許された時代はグランディング(GND)対策に金属を使うこともできたが、今の筐体の薄さでは使用できない。あらゆる部分に自社のノウハウを詰め込んだ」(藤岡氏)
薄さを維持しながらもバッテリーと液晶はより大きく、高性能でなければならない。この部分でも法人向けタブレット端末やスマートフォンを開発/製造してきたノウハウを生かし、設計面で工夫することで高密度かつ高い安全性を担保したという。
とはいえ、設計力や部品の性能のみで改善するには限界がある。CPUでの処理に工夫を凝らすなどの対策も欠かせないと藤岡氏は説明する。
「画素数の高い動画の再生やオンライン会議など、長時間CPUに負荷のかかる利用シーンも想定して熱対策を講じる必要がある。設計面の工夫だけでなく、CPU側でも制御するなどの2重、3重の対策は欠かせない。カメラも暗所での撮影や自動補正にCPUでの処理がなくてはならない。レンズとセンサーだけできれいな画を再現することの難しさは年々高まっている」(藤岡氏)
こうした性能面の工夫や価格面だけでは市場に浸透できないと考え、法人向けメーカー保証については3年のオプションも用意した。また、特定のアプリケーションのプリインストールなどのキッティングや個別カスタマイズ、特別色の指定なども小ロットから対応する。ハイスペックな機種を大量販売する中華勢に対抗する秘策として、JENESISではエントリークラスからミドルクラスのスペックだが安定性のあるハードウェアと、小回りの効いたサービスで勝負をかける予定だ。
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