大阪大学は、骨配向性を整えることを設計コンセプトに組み込んだ、チタン合金製脊椎ケージを開発した。大型動物を用いた実験により、従来ケージの3倍以上も強い骨との結合強度が示された。
大阪大学は2022年6月8日、骨配向性を整えることを設計コンセプトに組み込んだ、チタン合金製脊椎ケージを開発したと発表した。大型動物を用いた実験により、高い性能を証明している。北海道医療センター、帝人ナカシマメディカルとの共同研究による成果だ。
脊椎ケージとは、脊椎疾患で不安定化した椎間を機能的に連結し、骨の再生を誘導して、脊椎が本来の力学的安定性を取り戻すために用いられる。
今回開発した脊椎ケージは、一方向に進展する孔と孔表面の微細な溝から成るハニカムツリー構造を特徴とする。溝が骨を作る骨芽細胞の一方向配列化が促進し、質の高い骨を早期に誘導する。また、形成された骨は、孔から常に力をかけ続けることで配向が維持され、長期的に骨の質を維持する。
研究グループは、金属3Dプリンティング技術を活用し、このハニカムツリー構造を設計通り正確に作製することに成功した。作製した脊椎ケージを用いて細胞実験を実施したところ、溝が骨芽細胞の配列化を促していることを確認した。
また、ヒツジに脊椎ケージを埋入した実験では、埋入後8週間という早期の段階で、従来ケージの3倍以上も強い骨との結合強度が示された。脊椎ケージ内に誘導された骨組織は、正常な骨と似た頭尾軸への骨配向性を持っており、このことが強度向上の理由と考えられる。
従来の脊椎ケージは、骨形成促進のために自身の腸骨などから採取した自家骨が必要となる。今回の開発品は自家骨を必要としないため、使用者のQOL向上にもつながる。
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