日立の2024中期経営計画では、利益の3分の1を稼ぎ出すデジタルリューション群「Lumada」の事業について、顧客との価値協創サイクルとなるデジタルエンジニアリング、システムインテグレーション、コネクテッドプロダクト、マネージドサービスの4象限に区分して情報開示する方針を示している。コネクティブインダストリーズセクターでは、デジタルエンジニアリングではフロントエンジニアリング力の強化、システムインテグレーションではトータルシステムソリューションの進化と拡大、コネクテッドプロダクトの拡大と機能強化、マネージドサービスに当たるリカーリングビジネスの強化を目指す。2024年度のLumada事業売上高は1.1兆円に達する見込みだ。
フロントエンジニアリング力の強化では、デジタルコンサルティング人員数を2022年4月時点で従来比倍増となる120人に強化した。
トータルシームレスソリューションの進化と拡大では、サントリー食品インターナショナルに代表されるインダストリーGr.の事例をアーバンGr.とアドバンストテクノロジーGr.に広げる。アーバンGr.では、設備遠隔監視と制御のノウハウを生かしたビルIoT(モノのインターネット)プラットフォームにより、ビル内のあらゆるデータを収集、可視化し、ビル管理の効率化や運営品質の向上を目指す。アドバンストテクノロジーGr.では、複雑化する半導体製造プロセスのデータを活用し、予兆診断や分析可視化、条件最適化などを可能にするサービスアプリケーション基盤の開発を、顧客近傍の協創拠点を使って加速させる。医用分野でも、装置稼働データに基づく予兆判断を軸とした情報サービスプラットフォームの提供を目指す。
さらに、グループ間を横断したトータルシームレスソリューションの事例として、再生医療分野のCPC(細胞調整・培養施設)設備群とバリューチェーン全体管理プラットフォームのダイナミックな連動を挙げた。青木氏は「こういった形で異なる分野の事業がソリッドに一体になるのは日立でも初めてのことだが、組織変更が決まってから議論を進めており、いろいろなシナジーを出せそうな手応えを得ている」と説明する。
リカーリングビジネスは、コネクティブインダストリーズセクターの事業成長をけん引することが期待されている。同セクター全体の売上高の2021〜2024年度の年平均成長率は5%だが、リカーリングビジネスの売上高は2021年度の7092億円から2024年度に8500億円となり、年平均成長率は6%だ。現時点では、既に昇降機などのシステムがコネクテッドな状態にあり設備遠隔監視などのサービスを提供できているアーバンGr.の事業規模が最大で、インダストリーGr.とアドバンストテクノロジーGr.はこれからの状況にある。しかし、2024年度までには3グループともサービスモデルを大きく進化させて、リカーリングビジネスの拡大につなげていく。
リカーリングビジネス拡大の起点となるのがコネクテッドプロダクトの拡大と機能強化である。2021年度時点ではコネクテッド化したプロダクトの総数は約80万台だが、2024年度には2.5倍の200万台まで飛躍的に拡大させる。コネクティブインダストリーズセクターのLumada事業で最も比率が大きいのがコネクテッドプロダクトであり、2024年度のLumada事業売上高1.1兆円を目指す中でも最も貢献が大きい見込みだ。なお、コネクテッドプロダクトによるリカーリングビジネスでは、サルエアーの空気圧縮機における再生品事業まで含めたサーキュラーエコノミーも実現している事例を紹介した。
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