東芝が新たなグループ経営方針を発表。以前に非注力事業とされた昇降機事業や照明事業、東芝テックも含めた傘下の各事業をコア事業と定め、これらコア事業から得られるデータの活用が可能なプラットフォームの構築によるDXを進めた後、2030年以降に量子技術によって各プラットフォームが最適化されるQXを目指す。
東芝は2022年6月2日、オンラインで会見を開き、新たなグループ経営方針を発表した。同年2月発表の東芝本体にインフラサービス事業を残してデバイス事業のみを分離独立させる2分割案で非注力事業とされた昇降機事業や照明事業、東芝テックも含めた傘下の各事業をコア事業と定め、これらコア事業から得られるデータの活用が可能なプラットフォームの構築によるDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めた後、2030年以降に量子技術によって各プラットフォームが最適化されるQX(量子トランスフォーメーション)を目指す。2025年度に売上高4兆円、営業利益3600億円、QXの入り口となる2030年度には売上高5兆円、営業利益6000億円を業績目標として掲げた。
東芝は会見と同日、2022年4月21日から募集していた潜在的な投資家およびスポンサーとの協議状況も発表しており、非公開化に関する初期的な提案が8件、東芝の上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する初期的な提案が2件あったという。ただし、これらの提案は、2022年6月28日開催予定の定時株主総会後での取締役選任が終了した後にパートナーの絞り込みが進められ、同年7月以降にパートナー候補との詳細な協議を進める計画である。
今回発表した経営方針は、2022年3月1日に新たに就任した代表執行役社長 CEOの島田太郎氏、代表執行役副社長 COOの柳瀬悟郎氏などから成る執行側が、同年3月24日開催の臨時株主総会で否決された2分割案を実施しないことを前提に、現行の東芝グループ全体の企業価値向上をどうすれば実現できるのかを検討したものとなる。
島田氏はまず、東芝グループの目指す姿として、経営理念である「人と、地球の、明日のために」を挙げて、そのために「デジタル化を通じて、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの実現に貢献する」と語る。そして、ここで言うデジタル化の道筋となるデジタルエコノミーの発展において、東芝が事業を展開するインフラやデバイスのサービス化やリカーリング化を図るDE(デジタルエボリューション)を進めた後、DEをプラットフォーム化によって可能になるDXを実現し、量子技術によってプラットフォーム同士がつながるQXに進んでいくというビジョンを示した。
東芝グループの中長期目標としては、2025年度に売上高4兆円、営業利益3600億円、2030年度に売上高5兆円、営業利益6000億円を掲げた。これらの目標数値は、現行の東芝の各事業から積み上げたものであり「為替影響や2分割案に必要だったスピンアウトコストなどを見直した結果」(柳瀬)だという。
特に、2030年度の営業利益目標は、足元の2021年度の営業利益が1590億円だったことを考えるとかなり積極的だが「ROS(売上高経常利益率)が26%と収益力の高いデータサービス事業が全社利益の20%を占める形で実現できる。そのための準備も既に進めている」(島田氏)ため、十分な成算があるとした。
元CEOの車谷暢昭氏が推進してきた中期経営計画「東芝Nextプラン」では、全てのセグメントで基礎収益力は着実に向上しており、中でもデータサービス事業につながるデジタルソリューションは収益力改善の成功事例となっている。今後は、デジタルソリューションを成功事例として全社展開することで、2025年度や2030年度の高い営業利益目標の達成に近づける。
さらに、東芝Nextプランから積み重ねてきた構造改革やCFT(クロス・ファンクショナル・チーム)活動によるコスト削減効果は2021年度までで累計1800億円となっている。2025年度までには、業務プロセス改革とITシステム改革を進めて700億円を積み増し、累計のコスト削減効果を2500億円まで引き上げたい考えだ。
この他、子会社統合は2020年11月発表の388社から2022年4月末時点で約30%に当たる118社を削減しており、2025年度までには40%削減を目指し、基礎収益力の強化につなげる。設計や製品のモジュール化、スマートファクトリーの適用拡大もさらに進める方針である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.