国内製造業は本当に脱炭素を実現できるのか――。この問いに対して、本連載では国内製造業がとるべき行動を、海外先進事例をもとに検討していきます。第3回は幅広い分野で製品、ソリューションを展開するシーメンスを取り上げ、6万5000社を超えるサプライヤーにどのように脱炭素の取り組みを働きかけているのかを解説します。
本連載の第2回では、脱炭素の潮流で大きな影響を受けている化学業界で世界最大手のBASFが、4万5000点の製品についてCO2排出量をどのように顧客に開示しているか、また、脱炭素を機会にどのように自社を再定義しているのか、その過程を紹介しました。
今回は、情報通信や交通、防衛、生産設備、家電など幅広い分野で製品、ソリューションを提供するシーメンスを取り上げ、脱炭素にどのように向き合っているかを複数回にわたって紹介します。まず本稿では、シーメンスのサプライヤーとの向き合い方を紹介します。サプライヤーへの対応は、GHG(温室効果ガス)プロトコルにおけるスコープ3の排出量削減の鍵を握る大事なポイントです。
はじめに、シーメンスが脱炭素関連で近年発表した目標や、実際の取り組みを概観しましょう。
シーメンスは2020年までに、2014年比でCO2排出量の半減に成功しました。そして上記に記載した通り、2030年までにスコープ1(工場からの直接排出量)とスコープ2(電気、熱、蒸気などの間接排出)で排出量をゼロにするという数値目標を掲げています。
2030年までのスコープ1、2でのネットゼロ達成に向けて、シーメンスが具体的にどのような取り組みをしているか、見てみましょう。
スコープ3に相当するサプライチェーンにおけるCO2排出量は、2030年までに20%削減、2050年までに100%削減する計画です。スコープ1と2はネットゼロ達成の見通しが立ってきており、あとはスコープ3のネットゼロ化を推進する、というのが同社の現在の立ち位置です。
なお、シーメンスはスコープ1、2でのCO2削減目標達成の見通しが悪くなっても、カーボンクレジット購入などで目標必達を目指すとしています。このカーボンクレジット購入に関する話は次回の記事で取り上げたいと思います。
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