人手不足やコロナ禍などにより、産業用ロボットやサービスロボットなど、ロボットの利用領域は急速に拡大している。一方でネットワーク化が進むこれらのロボットのセキュリティ対策については十分に検討されているとはいえない状況だ。本連載ではこうしたロボットセキュリティの最前線を取り上げる。第2回となる今回は、ロボットセキュリティ法規制の最新動向について紹介する。
産業用ロボットやサービスロボットなどロボットの利用領域が大きく広がる中で十分に検討されているとはいえないロボットセキュリティの最新動向について紹介する本連載。第1回では、社会活動の担い手として、ロボットの重要度が高まっているという点と、その一方でサイバーセキュリティ対策が進んでいないことについて解説した。
2022年に入り、この状況にもメスが入ると見られている。特に産業用ロボットの領域において、サイバーセキュリティ対策が必須化される可能性が高まっている。第2回となる本稿では、ロボットに関する法規制についてまとめるとともに、ロボットベンダーに求められている要求事項の概要について解説する。
ロボットの機能制御を担う「ロボットコントローラー」と呼ばれる機器の実態は、ほぼ産業用コンピュータと同じだといえる。ほとんどの場合、LinuxやWindowsをベースとしたOSで動作しており、コントローラーとして動作させるプログラムが搭載されている。ロボットコントローラーと、その他の産業用機器(シーケンサー、PLC、HMI)などは、産業用のプロトコルが利用されているとはいえ、イーサネットによって相互接続されている。
ロボット開発に、汎用的なソフトウェアコンポーネントが使われるようになった理由には、大きく2つのポイントがある。1つ目は、開発者の確保が容易であるという点だ。WindowsやLinuxは幅広く使われているため、対応できるエンジニアの数が多く、採用も比較的容易である。2つ目が、開発エコシステムが整備されている点だ。ディスプレイやタッチパネル、USB、Wi-Fiなどを動作させるための各種ドライバや開発ツールが豊富に存在しており、メーカーはコア機能の開発に集中することができる。
特に2000年以降は技術の高度化が進んだことからこれらの動きが強まり、機器開発の中でもITの採用が一般化し、IT関連技術の進化がロボット開発の利便性向上にも大きく貢献するようになった。しかし同時に、従来は考慮する必要がなかったサイバー攻撃の危険性がロボットにも及ぶようになってしまう副作用が起こっている。
産業用ロボットには、安全を担保するための国際規格がある。ISO 10218がそれに当たり、ISO 10218のパート1(以下、ISO 10218-1)では産業用ロボット自体について、パート2(以下、ISO 10218-2)ではロボットシステムのインテグレーションについての安全要求事項を定めている。
具体的にISO10218-1では、以下のような安全機能が求められている。
これらの安全を担保するため、今までは電気的および機械的特性のみが検証の対象となっていたが、今後はここにサイバーセキュリティも含まれるようになる見込みだ。具体的には、ISO10218-1に2022年の改訂により追加予定となっている。
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