スマート工場化の効果を経営陣にどう示すべきかいまさら聞けないスマートファクトリー(17)(2/3 ページ)

» 2022年03月31日 13時30分 公開
[三島一孝MONOist]

スマートファクトリー化の悩みの種「経営巻き込み」問題

 矢面さんがまた今日も印出さんを訪ねてきました。

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印出さん、こんにちは。この前はありがとうございました。


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矢面さん、こんにちは。その後はいかが。


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まずは、デジタル技術による変化をイメージできるように、座学で教育プログラムを用意してみることにしたんです。この前、第1回を実施したんですが、意外に評判が良くて、少し自信が付きました。


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あら、よかったわね。すぐに実行するところが矢面さんの良いところね。


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ありがとうございます!


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それで、今日もそれだけではないんでしょう。聞きたいことがあるのよね?


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そうなんです。以前も相談したんですが、経営陣の理解を得るのが難しくて、こうしたスマートファクトリー化への経営陣の巻き込みをどうすべきかに悩んでいるんです。


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第1回第2回でも出ていた、専務のことかしら。


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いえ、専務はいろいろ話し合って以来、協力的にはなってくれているのですが、それ以外の役員たちが否定的で、費用対効果などの目先の成果をすぐに要求されるんです。でも、部門横断的な取り組みを進めるには協力してもらわないといけないですし、その割にデジタル技術の変化にも疎くて困っているんです。何かいい手はないですかね。


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なるほど。よく聞く問題ね。ただ、打ち出の小づちのようにきれいに全てを解決できる処方箋のようなものはなくて、1つ1つを地道にやって理解を得ていくしかないのよ。まずは、前提として専務の説得の時にも話したように、将来ビジョンやロードマップなどの共通認識を下敷きに話すということね。


「それがなかった場合どうなるか」を考える

 本連載第1回第2回では、スマートファクトリー化の難しさとして、複数部門をまたがって進めていく必要があるにもかかわらず、それぞれの立場や部門によって目標が異なることが成果を生み出す難しさになっているということを説明しました。そこを乗り越えるためには、部門ごとの目的を一致させるための共通のビジョンやロードマップを用意することが一つの手段だということを説明しています。

 企業として現在置かれている経営課題とそれを解決する“ありたい姿”を描き、そこから逆算して、各部門で実現したいことを、ロードマップの形で落とし込み、それに沿った活動を進めていくことができれば、経営陣としても否定のしようがありません。重要なのは、目的を一致させるということで、スマートファクトリー化が企業の課題解決にどのように役立つのかを示すことが何よりも重要です。

 考え方のヒントとして面白いと感じたのが、あるスマートファクトリー化成功企業の推進者が語っていた「それがなかった時にどうなるかを考えてみる」ということです。スマートファクトリー化を前提とするのではなく、それを使わなかった場合に、経営課題解決や企業としての目的達成ができるかを考えてみれば、必要性がより明確になるということです。発生する機会損失や継続的なコストなどを費用対効果として考えれば、取り組む価値が明確化できます。「重要なのは目的を一致させることです。費用対効果などを要求されることも多いですが、目的が一致していれば、それを満たすような指標が明確化でき、効果があるかないかを数値で示すことができます」とその担当者は語っていました。そういう意味で目的を共有するのが第一歩だと考えます。

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