端的にいえば「データの収集と計算」です。評価したい製品のライフサイクルにおける材料使用量、エネルギー消費量、環境負荷物質排出量などのデータを収集、検証、集計し、環境影響評価に必要な値の定量化をします。
インベントリ分析においては、LCA調査の目的と範囲に応じて「正確さ」「完全性」「データ収集プロセスの推定時間」「整合性」「再現性」といったデータ品質要件を考慮する必要があります。特に複数製品の環境影響比較結果を外部に対して公開する場合、これら全てのデータ品質要件に従うことが推奨されます。
昨今、ちまたのブログやSNSなどで見かける「LCA」の多くは「CO2排出量のインベントリ分析結果」に相当するものであり、ISOの評価基準に照らし合わせると大半が不適切かと思われます。特にデータの整合性についての検証が不十分なものが多く見受けられます。
「○○の製造時排出」など、名称としては同じプロセスを指したものであったとしても、文献によってプロセスの区分けの仕方やその領域に対応したデータ算出根拠は異なります。前提条件が異なる各種文献から値を集めてきてもあまり意味のある結果にはなりませんので、Web上に公開されている値を参考にする際は注意が必要です。
インベントリ分析で得られた数値を元にして、潜在的な環境影響の重要度を評価するプロセスです。インベントリ分析の結果はあくまでも各評価項目における資源消費や環境負荷物質排出の定量値であり、それらが総合的にどれだけ環境影響を与えるのかを評価する必要があります。本コラムではあまり専門的な内容へ踏み込まないようにしているため詳細な計算は割愛しますが、適切な評価モデルによって定量値を環境影響評価へと換算することを目的としています。
(1)〜(3)の内容を元にして結果を解釈するプロセスです。設定した目的や調査範囲に対して、インベントリ分析および影響評価が適切であったかを判断し、報告書作成や追加分析の必要性検討を行います。特に複数製品の環境影響比較結果を外部に対して公表する場合は、その分野の専門家からなる第三者レビューによって結果の正当性を検証する必要があります。
これら(1)〜(4)の項目は単に定められた数字の順番通りに実施すればよいというものではなく、分析結果や条件設定の見直し、再検討・再定義を繰り返し、各項目を行ったり来たりしながら進めます。
今回は環境影響を評価する手法である「LCA」について「ISO14040」シリーズの内容を踏まえ、概要を整理してみました。ISOと聞くとお堅い形式的な文書仕事という印象を受ける方もいるかもしれませんが、複雑になりがちな思考プロセスを体系的に整理するためには有効な手法の1つであるかと思います。
世界を取り巻く状況が複雑化している昨今、自らが関わる環境活動について考える際には、多分野を横断し、俯瞰的に情報を整理することが求められるのかもしれません。今回ご紹介した「LCA」の考え方が読者の皆さまにとって何かお役に立てば幸いです。
日本カーリット株式会社 生産本部 受託試験部 電池試験所
研究開発職を経て、2018年より現職。日本カーリットにて、電池の充放電受託試験に従事。受託評価を通して電池産業に貢献できるよう、日々業務に取り組んでいる。
「超逆境クイズバトル!!99人の壁」(フジテレビ系)にジャンル「電池」「小学理科」で出演。
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