2030年までに2兆円投資、三菱重工がカーボンニュートラル技術の開発加速 : 脱炭素 (2/2 ページ)
また、三原製作所(広島県三原地区)では、工場敷地内に三原地区の電力需要に相当する太陽光発電設備を建設し、自社用電源によってスコープ2の脱炭素化を進め、2023年度末までの完全なカーボンニュートラルの達成を目指す。他技術の開発拠点としても活用する計画だという。
三原製作所の「カーボンニュートラル工場」化の計画[クリックして拡大] 出所:三菱重工
2023年からは、高砂製作所(兵庫県高砂市)で水素発電実証施設の「高砂水素パーク」が稼働予定だ。既存のガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)に水素貯蔵設備を追設する。次世代水素製造技術から水素ガスタービンによる発電までの、一貫したプロセスによる実証実験が可能になるという。メタンの熱分解を通じたターコイズ水素の製造も計画する。
高砂水素パークを稼働予定[クリックして拡大] 出所:三菱重工
高砂水素パークでは、中小型および大型の水素ガスタービン商用化に向けた実機検証も行う。大型ガスタービンによる水素30%混焼技術は2018年までに、水素100%専焼技術については2030年までに開発を実現する予定だという。いずれも2025年からの商用化を目指す。
この他、小型CO2 回収装置の市場展開も進め、2023年までにラインアップを拡充する方針だ。原子力発電所関連の技術開発や、バイオマスガス化炉を用いたDAC代替航空燃料(SAS:Sustainable Aviation Fuel)などの取り組みも進める。
小型CO2 回収装置の市場展開も進める[クリックして拡大] 出所:三菱重工
原子力発電所関連の技術(左)と、バイオマスガス化炉(右)の技術開発も進める[クリックして拡大] 出所:三菱重工
三菱重工は今後も、多種多様な産業分野の連携を通じて、産業エコシステム全体での環境価値と経済価値の創出を図るとしている。また、三菱重工 常務執行役員 CTOの伊藤栄作氏は「カーボンニュートラル社会の実現に向けた理念は、当社の社是ともつながる。当社グループの幅広い製品、サービス群で多種多様な産業を共存させる取り組みを進め、環境価値と経済価値の両立を目指す」と語った。
⇒その他の「脱炭素」の記事はこちら
製造業の脱炭素って本当に可能ですか? 欧州よりも積極性が求められる日本
国内製造業は本当に脱炭素を実現できるのか――。この問いに対して、本連載では国内製造業がとるべき行動を、海外先進事例をもとに検討していきます。第1回は脱炭素を巡る欧州と日本の「共通点」と「相違点」を解説します。
いまさら聞けない「CO2ゼロ工場」
「カーボンニュートラル化」が注目を集める中、製造業にとっては工場の「実質的CO2排出ゼロ化」が大きなポイントとなります。本稿では「CO2ゼロ工場」のポイントと実現に向けてどういうことを行うのかを簡単に分かりやすく紹介します。
人工光合成ではない「P2C」でCO2からCOを生成、東芝が工業化にめど
東芝がCO2(二酸化炭素)を燃料や化学品の原料となるCO(一酸化炭素)に電気化学変換する「Power to Chemicals(P2C)」を大規模に行う技術を開発。一般的な清掃工場が排出する年間約7万トンのCO2をCOに変換でき、CO2排出量が清掃工場の数十倍になる石炭火力発電所にも適用可能だという。
製造業の約70%がカーボンニュートラル対応の「全社方針あり」
日本能率協会は、製造業におけるカーボンニュートラル対応の現状や課題に関するアンケート調査結果を発表した。見える化による現場の省エネ活動は進んでいるが、今後はサプライチェーンを含めた取り組みが鍵になる。
2050年のカーボンニュートラル目標実現に向け、再生可能エネルギー導入を推進
安川電機は、地球温暖化の抑制に向けて、グループの環境ビジョンに2050年カーボンニュートラル目標を新たに設定した。グローバル事業活動に伴う二酸化炭素の排出量実質ゼロを目指す。
脱炭素対応急ぐ三菱重工、100%子会社の三菱パワーを2021年10月に統合へ
三菱重工業は、2020年度(2021年3月期)連結決算と2021〜2023年度の中期経営計画「2021事業計画(21事計)」の進捗状況について説明。2020年度連結業績は、2020年11月に発表した通期見通しをおおむね達成した。21事計では、エナジー事業を脱炭素に対応させる「エナジートランジション」に向け、100%子会社の三菱パワーの統合を決めた。
複雑なサプライチェーンのCO2排出量算定を効率化する日立の新サービス
日立製作所は2021年4月5日、クラウド型の企業向け環境情報管理システム「EcoAssist-Enterprise」の新サービス「CO2算定支援サービス」を、日立コンサルティングと連携して提供開始すると発表した。複雑化しがちなサプライチェーン(スコープ3)周りのCO2排出量の算定方法などを、EcoAssist-Enterpriseやコンサルティングサービスを通じて見える化、仕組み化する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.