ロボットの遠隔操作を身近に、川崎重工とソニーが作ったリモートロボティクス2022国際ロボット展

川崎重工とソニーグループが設立した遠隔操作ロボットサービスのリモートロボティクスは、「2022国際ロボット展(iREX2022)」(東京ビッグサイト、2022年3月9〜12日)の川崎重工ブース内に出展し、同社の持つ技術力や遠隔ロボットサービスの内容を紹介した。

» 2022年03月16日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 川崎重工業(以下、川崎重工)とソニーグループが設立した遠隔操作ロボットサービスのリモートロボティクスは、「2022国際ロボット展(iREX2022)」(東京ビッグサイト、2022年3月9〜12日)の川崎重工ブース内に出展し、同社の持つ技術力や遠隔ロボットサービスの内容を紹介した。

photo 川崎重工内のリモートロボティクスの紹介を行うコーナー。さまざまなロボットの遠隔操作のシチュエーションに合わせてデモを行った[クリックで拡大]

川崎重工とソニーグループが作ったロボット遠隔操作の共同出資会社

 リモートロボティクスは2021年5月に川崎重工とソニーグループがそれぞれ50%出資で設立を発表した「ロボットの遠隔操作」を中心とした共同出資会社で、2021年12月1日から活動を開始している。川崎重工が持つ、ロボティクス技術やモビリティ技術と、ソニーグループが持つ画像処理技術やセンシング、通信技術を活用し、ロボットを遠隔地から操作するリモートロボットプラットフォームの構築を目指している。

 リモートロボティクス 代表取締役社長の田中宏和氏は「労働人口減少が進む中でロボットの活用は広がっている。ただ、人の作業を完全に代替し自動化を行うにはコストや負荷が大きくなり過ぎるケースもあり、こうした領域をロボットの遠隔操作により担っていく。人の判断などを加えることでロボットが難しい領域を補えるようにする」と語っている。

 川崎重工とソニーグループでこれらの仕組み構築に取り組む強みについて田中氏は「川崎重工にはロボットやモビリティに加え、以前からロボットの遠隔操作に取り組んできたノウハウなどがある。一方でソニーには、さまざまな映像音響技術を持ち、遠隔操作に必要な判断を支援する技術力がある。また遅延対策としても放送局向けの技術で圧縮や伝送の工夫で遅延を抑えてきた実績などもあり、これらを活用できる」と述べている。

 具体的には、クラウド環境にロボットのリモート操作を行うアプリケーションや操作画面のUI(ユーザーインタフェース)、ワークフロー設定などの仕組みを構築しこれらとロボットを結ぶリモートロボットコントローラーを開発し、これらをさまざまなロボットで共通に動かせるようなリモートロボットプラットフォームとする。このリモートロボットコントローラーを、ロボット制御用のPCに接続する。ロボット側PCにはリモートロボットプラットフォームの指示とロボットの動きが最適に機能するようにSDK(Software Development Kit)およびAPI(Application Programming Interface)を組み込み、調整などを行う。ロボットそのものの動きの制御は通常通りロボットコントローラーで実施する。

photo リモートロボットシステムの構成図[クリックで拡大]出所:リモートロボティクス

既に500kmの遠隔操作実証に成功

 今後は、さまざまなパートナーを募り、プラットフォームの強化とともに、活用の枠組み作りを進めていく方針だ。遠隔操作を行うロボットのハードウェアを実装するハードウェアシステムインテグレーターや、ソフトウェア領域のシステムインテグレーター、ロボットメーカーやハンドメーカーなどの参加を提案していく。「幅広くロボットメーカーとの協力も進めていく」(田中氏)。また、コンサルティングや代理店などの販売パートナーも募集する。

 既にパイロット実証は進めている。2022年2月には500kmの遠隔地から公衆回線を通じてロボットに作業指示を行う実証試験を行い、成功したとしている。通信による遠隔操作となると遅延による指示と実際の作業とのタイムラグが課題視されるところだが、その点も「運用次第で解決できる」と田中氏は訴える。

 例えば、実証にはリサイクル工場の選別作業で、ベルトコンベヤーで流れてくるビンの把持位置をロボットに遠隔で指示するというものがあった。「ロボットの作業そのものを直接人が操作するのではなく、基本の作業動作はロボットに設定しておき、ロボットに難しいビンの把持位置だけを指示する形とした。さらに、これをロボットそのものに取り付けたカメラで指示するのであれば遅延は大きな問題になるが、カメラをロボットから離しコンベヤーの上流に配置すれば、遅延の影響は抑えることができる。こうした工夫を行えば問題なく遠隔操作ができた。運用の工夫次第で今の技術でもさまざまな効率化を図ることができる」と田中氏は手応えを語る。

 iREX2022でも既に「さまざまな業種から相談が来ている」(田中氏)としており、今後はパートナーとの共創を進めながら、プラットフォームの拡充を進めるとともに、それぞれの業種に合わせた実証を進めていく方針だ。「ロボットの遠隔操作環境が広がれば、従来はさまざまな制約からフルタイムで働くことができなかった人でも働ける環境を作り出すことができる」と田中氏は意義について語っている。

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