大和研究所、再生材使用率95%のリサイクル材料や低温はんだを「ThinkPad」へサステナブル設計(2/4 ページ)

» 2022年03月09日 10時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

再生材使用率95%以上を実現、ThinkPadにおけるリサイクル材料適用

 製品開発におけるリサイクル材料の使用に関しては、ソニーセミコンダクタソリューションズとの戦略的パートナーシップに基づき、ソニーセミコンダクタソリューションズの環境配慮型難燃再生プラスチック「SORPLAS」を適用した、ThinkPad製品の開発を進めている。

 SORPLASとは、“Sustainable Oriented Recycled Plastic”の略称で、廃棄されたDVDなどの光ディスクや水ボトルなどから再生したポリカーボネイト樹脂に、独自の難燃剤(PSS-K)を微量添加することで作られる難燃再生プラスチックだ。PSS-Kは1%未満の添加でポリカーボネート樹脂を難燃化できるため、再生材の使用率を最大で99%まで高めることができるのが特長である。

SORPLAS(1)SORPLAS(2) 難燃再生プラスチック「SORPLAS」について[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ/レノボ・ジャパン

 SORPLASは、難燃剤の添加量が少なくて済むことからポリカーボネイト樹脂の本来の物性を保つことが可能で、回収/破砕、混合、溶融/混練し、リペレット化を繰り返し行っても、初期物性を保持し続けることができるという。また、SORPLASの調色に関しては「基本的にあらゆる調色は可能である。ただし、原材料に青色の水ボトルを用いている関係で、要求の色にきっちりと合わせることが困難なケースもあり得る」と、ソニーセミコンダクタソリューションズ IoTソリューション事業部 事業部長の中村俊之氏は説明する。

SORPLASの製造プロセスについて SORPLASの製造プロセスについて[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ/レノボ・ジャパン

 両社の協業は、リサイクル材料をThinkPad製品のACアダプター(45W/65W)に用いることを目的に2017年からスタート。試行錯誤しながら2019年にはUL認証を取得し、途中、金型のチューニングや射出位置/成形条件の最適化、設計変更などの改良を加えながら、2020年12月〜2021年1月に、再生材を95%以上使用したリサイクル材料(SORPLAS)でACアダプターの量産出荷を果たした。

ソニーセミコンダクタソリューションズとの協業の歩み ソニーセミコンダクタソリューションズとの協業の歩み[クリックで拡大] 出所:レノボ・ジャパン

 また、同社はThinkPad製品の中でのSORPLASの適用範囲をさらに拡大し、スピーカーボックス、アンテナ&ケーブルホルダー、バッテリーパックにまで広げている。

 「一般的な民生機器とは異なる高い品質基準や堅牢性を誇るThinkPad製品に対して、われわれのSORPLASを適用するには、既存のラインアップでは対応が難しかった。そのため、製品それぞれの要求仕様に合わせた新しいSORPLASを開発することで製品化を実現した。例えば、ACアダプターであれば高耐久性はもちろんのこと、高い衝撃強度を実現するSORPLASを開発。スピーカーボックスやバッテリーパックに関しては、薄肉構造であることから難しさもあったが、高耐久で高難燃性を保持しつつ、成形しやすいSORPLASを新たに開発し、厳しい要求に応えることができた」(中村氏)

ThinkPad製品に対してSORPLASの適用範囲を拡大 ThinkPad製品に対してSORPLASの適用範囲を拡大[クリックで拡大] 出所:レノボ・ジャパン

 サステナブルな製品開発を推進する立場にある、レノボ・ジャパン Distinguished Engineer&Executive Director,Commercial Subsystem Development,CPSDの小菅正氏は「われわれの調査によると、2021年の時点で競合他社は50%程度の再生材を使用したリサイクル材料で製品を開発し、2022年中の量産に向けて評価を進めている状況にあるが、レノボは既に再生材使用率95%以上のリサイクル材料で製品開発を進めている。競合他社と比較して、3年以上のアドバンテージがあると認識している」とリサイクル材料の使用において、レノボが業界をリードする立場にあると強調する。

 さらに現在は、SORPLASをPCの筐体やキーボードカバーへ適用すべく開発、評価、検証が進められているという。「現時点における意気込みとしては、今後1年、場合によっては2年以内に適用に向けためどが付けられたらと思っている(※注1)。ただ、実際には高再生材率を維持したまま、筐体やキーボードカバーに求められる剛性のスペックを達成しなければならないため、非常にハードルの高い挑戦だと考えている」(中村氏)と語る。

※注1:素材開発としてのめどのことであり、SORPLASを筐体やキーボードカバーに採用した新製品(PC)が今後1年、2年以内に市場投入されるという意味ではない。

将来に向けて、筐体やキーボードカバーにもSORPLASを適用すべく研究開発を進めている 将来に向けて、筐体やキーボードカバーにもSORPLASを適用すべく研究開発を進めている[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ/レノボ・ジャパン

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