連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第10回では機械要素の描き方をテーマに「ねじ」の製図を取り上げる。
2D図面の作製において、ねじや歯車といった「機械要素」といわれる部品を描くことが多くあります。今回からこの機械要素の描き方について解説していきます。まずは、ねじです。
日本産業標準調査会の「データベース検索−JIS検索」で「製図 ねじ」と入力して検索すると、多くの規格番号が検索結果として表示されます。このうち、「JIS B 0002-1:1998 製図−ねじ及びねじ部品−第1部:通則 Technical drawings−Screw threads and threaded parts」の中で、ねじについての解説と製図方法が詳しく記されています。
ねじの構造を分類すると表1のようになります。
「おねじ」とは、円筒面に螺旋(らせん)状のねじ山を設けたもので、軸の外側にねじ山のあるものをいいます(図1)。
「めねじ」とは、穴の内面にねじ山を設けたもので、軸の内側にねじ山があるものをいいます(図2)。
筆者が普段使用している3D CAD「SOLIDWORKS」では、「ねじ山フィーチャー」を使用することで“ねじ山の形状”を表すことができます。SOLIDWORKSでねじ山フィーチャーを使用する際、以下のようなメッセージが表示されます(図3)。
このメッセージには“ねじ山フィーチャーによって作成されるスケッチ輪郭は、実際に加工する寸法が適用されていないので、作成された3Dデータからそのまま加工しないように注意してください”という内容が記載されています。3Dモデル作成時に気を付けてください。
一般的によく使用される「メートルねじ」について、図4に示します。
3D部品図を描く上でも、2D部品図を描く上でも、ねじのねじ山各部の名称に必要な数値とその名称の理解は必要です。おねじ/めねじともに、ねじには「外径」「内径」「谷の径」があり、隣り合うねじ山との距離「ピッチ」、ねじ山の「角度」や「有効径」といった要素があります。
おねじの山の頂とめねじの谷の径、またおねじの谷の径とめねじの内径の間の関係としては、おねじの外径はめねじの谷の径に等しくなりますが、実際には図5の引き出し線で示したように隙間があります。おねじ/めねじともに、山の頂は平に描くため図4では表されていませんが、「JIS B 0101:2013 ねじ用語」を確認すると、谷の底は図5のように丸みを付けることになっています。
ねじが固い/緩いなどの“状態”は、ねじの「ななめの部分=フランク(面)」の状態により発生しますが、これを管理するものが有効径になります。有効径は、ねじ溝の幅がねじ山の幅に等しくなるような仮想的な円筒(または円すい)の直径のことをいいます。ねじ要素の定義も「JIS B 0101:2013 ねじ用語」に記されていますので、一度確認することをオススメします。
このようなメートルねじでは、ピッチと直径の関係から「並目ねじ」や「細目ねじ」と呼ばれるものがあります。なお、この読み方も「JIS B 0101:2013 ねじ用語」に規定されています。細目ねじのことを「さいめねじ」と呼ぶ人もいますが、正しくは「ほそめねじ」です。「さいめねじ」と言っても問題なく通用すると思いますが、用語を正しく覚えることは大切です。
細目ねじは一般的にあまり使用されませんが、その特徴として、並目ねじに対して「リード角」が小さいことが挙げられます。リード角とは“ねじの螺旋の角度”のことを示します。同一径のねじであったとしても、ピッチが小さくなるということは、螺旋の角度も浅くなります。
このリード角ですが、“リード角が小さいほど、ねじが緩むのに必要なトルクが増加”します。そこで「並目ねじよりも、細目ねじの方が回転緩みに対して強い」ということから、締結力を上げるために細目ねじを使用するケースがあります。また、リード角が小さいほど、ねじ1回転当たりの進む量も少なくなることから、調整機構において細かな量で進めたい(送りたい)場合にも細目ねじが用いられます。
これらの知識は、製図そのものの内容ではありませんが、機械要素を選択する上で重要な内容となります。
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