機械要素の基礎〜ねじの製図について〜3D CADとJIS製図(10)(2/2 ページ)

» 2022年03月07日 10時00分 公開
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ねじの製図

 では、ねじの実形状を2D図面で描く場合はどうすべきでしょうか。3D CADであればまだしも、2D CADや手描きとなれば非常に手間が掛かりますし、図7のように理解しやすいものにはなりません。

ねじの2D図面 図7 ねじの2D図面[クリックで拡大]

 そこで、簡略化された図示方法が「JIS B 0002-1」に規定されています。

JIS B 0002-1より抜粋/編集 リスト2 JIS B 0002-1より抜粋/編集

 JISの図を例に、SOLIDWORKSで3D部品図と2D部品図を作成します。おねじ部品の場合、図1のように、ねじ山フィーチャーを使用すると、単純化したねじ山の2D図面を作製できないため、挿入(Insert)→アノテートアイテム(Annotations)→ねじ山(Cosmetic Thread)の順でねじの定義を設定します。

 なお、図8のように“ねじのイメージ”を表示するには、3Dパーツのフィーチャーマネジメントツリーから「アノテートアイテム」を選択し、そのプロパティで「シェイディングされたねじ山」にチェックを入れます(図9)。

3Dモデルにおけるねじ山表示(筆者推奨) 図8 3Dモデルにおけるねじ山表示(筆者推奨)[クリックで拡大]
アノテートプロパティ 図9 アノテートプロパティ[クリックで拡大]

 図10にあるように、ねじ山の頂は外形線として太い実線、ねじの谷底の線は細い実線で表されます。また、ねじの端面から見た図(例:図10の右側面図)のように、円周の4分の3にほぼ等しい円の一部で表し、できれば右上方側を四分円開けることが望ましいとされています。また、ねじの端面から見た図では面取りによって見える線を省略します。

ねじの図面 図10 ねじの図面[クリックで拡大]
JIS B 0002-1より抜粋/編集 リスト3 JIS B 0002-1より抜粋/編集

 なお、JISでは“ねじ部の境界が見える場合には太い実線で表す”と「3.2.5項 ねじ部の長さの境界」に記載されていますが、筆者のモデルの例では、図10に示すように、線のフォントとして設定された線種となってしまい、太い実線では表されていません。

 ねじ部品の断面図にハッチングする場合は“ねじの山の頂を示す線まで伸ばして描く”とされています。図11図12にその例を示しました。

ねじの断面図 図11 ねじの断面図[クリックで拡大]

 ねじ穴作成の場合、SOLIDWORKSでは「穴ウィザード」により作成すると便利です。おねじ部品と同様に、ねじ部をシェイディング表示することもできます。2D部品図を描く場合、「断面図作成機能」においても図12で示すように、ねじ穴の断面図ではねじ山の頂までハッチングが描かれています。また、隠れたねじを描く場合、山の頂および谷底を細い破線で表しています。これらは、SOLIDWORKSのデフォルトの機能をそのまま利用して図面化しています。

ねじ穴のある2D図面の作製 図12 ねじ穴のある2D図面の作製[クリックで拡大]

 図12の断面図で、ねじ穴部分を拡大します(図13)。おねじ、めねじの加工を行う場合、ねじが加工されていない部分が残ります。これを「不完全ねじ部」といいます。筆者も2D図面を描く際に、これをどうすればよいか悩みましたが、JISには“不完全ねじ部は省略可能であれば表さなくてもよい”と記載されています。

ねじ穴部分を拡大 図13 ねじ穴部分を拡大[クリックで拡大]

 機能上これを表す必要がない場合には省略が可能です。なお、SOLIDWORKSの穴ウィザードでは、ねじ穴サイズ、ねじ山の深さ、下穴ドリルの径、下穴ドリルの深さを設定しますが、図面化においては不完全ねじ部は作成されません。

 なお、図12の場合、前回解説した「穴寸法」は図14のように表示できます。

ねじ穴の穴寸法 図14 ねじ穴の穴寸法[クリックで拡大]

 ねじに関する解説はまだまだあります。次回も、ねじの解説を取り上げつつ、他の機械要素についても説明します。お楽しみに! (次回へ続く

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Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛けるプレマテック株式会社で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)/SOLIDWORKS User Group Network(SWUGN)のリーダーも務める。


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