こちらがドローンの動作検証を行っているラボです。
さすがドローンが飛ぶだけあって、学校の体育館くらいの広さで、天井も高くて開放的な空間だな。
ずいぶんと広いところでやるのですね。
はい、複数のドローンの連携実験をやるので、ある程度の広さと高さが必要です。こちらが、今開発中のプロトタイプ機です。今日はこちらの3台を使って、連携プログラムのテストをします。
へぇ。ドローンは初めて見るのですが、意外と大きいですね。またがって飛びたくなる感じです。
あはは、さすがにそれは無理ですね。とはいえ、農薬を積まないといけないので、小さい機種でもそれなりのサイズにはなります。
やっぱり実際に見るって大事ですね。セキュリティ対策って目に見えないことが多いですけど、今回のプロジェクトで現場を見ることの大事さを痛感しています。
お役に立てたようで、お誘いしてよかったです。では、早速デモを見てもらいましょうか。
机のノートPCの画面をのぞき込んで、何やら操作しているみたいだけど、ドローン動かすのにPC使うのねぇ。勝手にラジコンのコントローラーみたいなものイメージしていたなぁ。
危ないので十分離れてくださいね。そこの壁際から動かないでください。では、行きますよ。テークオフ!
掛け声とともに、3台のドローンがそろってふわりと動き始めて、ゆっくりと上昇し始めた。
おー。浮いた、浮いた! きれいにそろってますね。水泳のシンクロみたい。
これは群制御といって、ドローン同士が相互に通信しながら、お互いの位置関係を制御する技術です。こうすれば、一度に広範囲に農薬を散布できるというわけです。
へぇ、なるほどー。確かに1台でやるよりも効率よさそうですね。
では、移動させてみますね。実際には農地の形状に合わせて動くのですが、今日は取りあえずラボ内を一周してみましょう。
3台のドローンは、きれいな編隊を組んでラボ内を周回しはじめた。なるほど、これで農薬散布できれば、農家の人は楽だろうなぁ。ん?なんか1台編隊から外れてこっちに向かっているぞ。
あれ? なんか変ですよ。あの子が編隊から離れてこっち来るんですけど。
あー、そうですか?
井之辺さんは、PCの画面を流れるログらしきものを一心に眺めていて、顔をあげようとしない。その間にもドローンはさらに加速してこちらに近づいてくる。
ほらほら、井之辺さん、こっち来る! ひゃぁー!!
あー、え? 本当だ! 青井さん取りあえず伏せてください!
ようやく顔をあげた井之辺さんが叫んだのと同時に、暴走ドローンは、私の眼前で方向が逸れ、壁に衝突しバランスを崩してそのまま落下した。思わず尻もちをついてしまったけど、けががなくてよかったぁ。
青井さん、大丈夫ですか!? 大変申し訳ありません。修正したばかりのプログラムにバグがあったみたいで。
井之辺さんがこちらを心配そうに駆け寄ってくる。全くもう、気付くのが遅いよ。
何とか大丈夫です。こういうことってよくあるのですか?
あー、めったにないのですけど、今ちょうどプログラム全体のスリム化をしていて、バグが出やすい状態ではあったかもです。あと、入場者はヘルメットをするルールを忘れていました。申し訳ありません。
井之辺さんの説明を聞いていて、なんとなく感じていた違和感がはっきりしたような気がした。
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