特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

セキュリティは無駄なのでイノベーションに極振りしたいと思います。事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(6)(4/5 ページ)

» 2022年02月15日 10時00分 公開
[佐々木弘志MONOist]
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青井葵、危機一髪!

こちらがドローンの動作検証を行っているラボです。


 さすがドローンが飛ぶだけあって、学校の体育館くらいの広さで、天井も高くて開放的な空間だな。

ずいぶんと広いところでやるのですね。


はい、複数のドローンの連携実験をやるので、ある程度の広さと高さが必要です。こちらが、今開発中のプロトタイプ機です。今日はこちらの3台を使って、連携プログラムのテストをします。


へぇ。ドローンは初めて見るのですが、意外と大きいですね。またがって飛びたくなる感じです。


あはは、さすがにそれは無理ですね。とはいえ、農薬を積まないといけないので、小さい機種でもそれなりのサイズにはなります。


やっぱり実際に見るって大事ですね。セキュリティ対策って目に見えないことが多いですけど、今回のプロジェクトで現場を見ることの大事さを痛感しています。


お役に立てたようで、お誘いしてよかったです。では、早速デモを見てもらいましょうか。


 机のノートPCの画面をのぞき込んで、何やら操作しているみたいだけど、ドローン動かすのにPC使うのねぇ。勝手にラジコンのコントローラーみたいなものイメージしていたなぁ。

危ないので十分離れてくださいね。そこの壁際から動かないでください。では、行きますよ。テークオフ!


 掛け声とともに、3台のドローンがそろってふわりと動き始めて、ゆっくりと上昇し始めた。

おー。浮いた、浮いた! きれいにそろってますね。水泳のシンクロみたい。


これは群制御といって、ドローン同士が相互に通信しながら、お互いの位置関係を制御する技術です。こうすれば、一度に広範囲に農薬を散布できるというわけです。


へぇ、なるほどー。確かに1台でやるよりも効率よさそうですね。


では、移動させてみますね。実際には農地の形状に合わせて動くのですが、今日は取りあえずラボ内を一周してみましょう。


 3台のドローンは、きれいな編隊を組んでラボ内を周回しはじめた。なるほど、これで農薬散布できれば、農家の人は楽だろうなぁ。ん?なんか1台編隊から外れてこっちに向かっているぞ。

あれ? なんか変ですよ。あの子が編隊から離れてこっち来るんですけど。


あー、そうですか?


 井之辺さんは、PCの画面を流れるログらしきものを一心に眺めていて、顔をあげようとしない。その間にもドローンはさらに加速してこちらに近づいてくる。

ほらほら、井之辺さん、こっち来る! ひゃぁー!!


あー、え? 本当だ! 青井さん取りあえず伏せてください!


 ようやく顔をあげた井之辺さんが叫んだのと同時に、暴走ドローンは、私の眼前で方向が逸れ、壁に衝突しバランスを崩してそのまま落下した。思わず尻もちをついてしまったけど、けががなくてよかったぁ。

青井さん、大丈夫ですか!? 大変申し訳ありません。修正したばかりのプログラムにバグがあったみたいで。


 井之辺さんがこちらを心配そうに駆け寄ってくる。全くもう、気付くのが遅いよ。

何とか大丈夫です。こういうことってよくあるのですか?


あー、めったにないのですけど、今ちょうどプログラム全体のスリム化をしていて、バグが出やすい状態ではあったかもです。あと、入場者はヘルメットをするルールを忘れていました。申し訳ありません。


 井之辺さんの説明を聞いていて、なんとなく感じていた違和感がはっきりしたような気がした。

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