グリッドは2021年12月23日、量子アルゴリズムに着想を得た機械学習アルゴリズム「量子インスパイア型分類アルゴリズム」を開発したと発表した。量子アルゴリズム研究においては「古典的」とされているアルゴリズムを活用することで、学習をより効率的に行う。
グリッドは2021年12月23日、量子アルゴリズムに着想を得た機械学習アルゴリズム「量子インスパイア型分類アルゴリズム」を開発したと発表した。量子アルゴリズム研究においては「古典的」とされているアルゴリズムを活用することで、学習をより効率的に行う。
今回発表した量子インスパイア型分類アルゴリズムは、代表的な量子アルゴリズムである「Deutsch-Jozsaアルゴリズム」と、古典的なクラスタリングアルゴリズムである「DBSCANアルゴリズム」の2つを融合した、データ群の分類問題に適用可能な機械学習アルゴリズムである。DBSCANアルゴリズムは特定の円内に存在するデータ数によってクラスタを生成する密度準拠クラスタリングを行い、Deutsch-Jozsaアルゴリズムは関数の出力が常に一定か、あるいは特定の入力値に依存するのかを判定する。
量子インスパイア型分類アルゴリズムは、データ群の分類基準となるデータ点(サポートベクトル)を決定して、さらにそのサポートベクトルを基準に未知のデータを分類する、という2ステップの処理を行う。より具体的には、1つのデータ点を中心とした円の中に存在するデータが「全て同じラベルに属するか」「異なるラベルが混在しているか」を判定して、混在する場合は各ラベルの数をカウントする。全判定が完了した後、カウント数の上位数十パーセントに該当するデータ点を抽出し、それらをサポートベクトルとして決定する。
従来の機械学習アルゴリズムでは、データ分類の決め手になるデータを1つずつ検証して判定を行っていた。一方で、量子インスパイア型分類アルゴリズムはDeutsch-Jozsaアルゴリズムを活用することで、多数のデータからサポートベクトルになり得るデータ点をより少ない回数で判定できるという。
量子インスパイア型分類アルゴリズムの新規性について、グリッド 代表取締役 曽我部完氏は「Deutsch-Jozsaアルゴリズムは量子アルゴリズムを研究する上で誰もが一番はじめに学ぶほど、古典的かつ代表的なものだ。ところが、実際にそれをどのように使用するべきかは、実はいままで良く分かっていなかった。それをサポートベクトルを判定する要素として活用した点が特徴的だ」と説明した。
また、量子インスパイア型分類アルゴリズムは線形分類と非線形分類のいずれでも、従来手法(Kernel SVM)よりモデル学習の計算量が少なく、計算速度の面でも優位性があることが理論的に確認されているという。また、今回発表したアルゴリズムは古典コンピュータのみでも実行できるが、アルゴリズム内の計算を一部量子コンピュータでも実行することで、計算速度のさらなる高速化も期待できるようになる。
曽我部氏は「古典コンピュータで動作するアルゴリズムと、量子アルゴリズムに着想を得た概念を取り入れ融合させる取り組みはこれまであまりなかった。当社では今後、こうした動きが強まり、世界的に広まっていくのではないかと考えている」と語った。
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