テストでバグ発見!(5)電卓プログラムに潜むバグ【出題編】山浦恒央の“くみこみ”な話(147)(3/3 ページ)

» 2021年11月17日 10時00分 公開
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3.3.3 演算子入力イベント

3.3.3.1 入力処理1モード

 演算子(+、−、*、/、%)を入力した場合は、表示エリアの入力情報と入力した演算子を記憶し、入力処理2に遷移する。また、表示エリアをクリアし、(+、−、*、/、%)ボタンを無効化し、「=」ボタンを有効化する。

3.3.3.2 入力待ちモード

 繰り返し演算(1回演算した後、続けて演算子(+、−、*、/、%)を入力)した場合は、表示エリアの入力情報と選択した演算子を取得する。さらに、表示エリアをクリアし、入力処理2に遷移する。また、「+、−、*、/、%」ボタンを無効化、「=」ボタンを有効化する。

3.3.4 特殊演算イベント

3.3.4.1 入力待ちモード、入力処理1モード、入力処理2モード

 特殊演算を行う場合は、演算結果を表示エリアに表示する。

  • 表示エリアが空欄以外で、√を入力する場合は、表示エリアの入力情報から平方根を演算し、表示エリアに表示する。なお、出力が小数第4位以降となる場合は、小数第4位を四捨五入し、3桁で表示する。
  • 表示エリアが空欄以外で、+/−を入力する場合は、表示エリアの入力情報から符号を反転し、表示エリアに表示する。

3.3.5 クリアイベント

3.3.5.1 入力待ちモード、入力処理1モード、入力処理2モード

 「C」を選択した場合は、表示エリアの文字、表示エリアと演算子の入力情報、ボタンの状態を初期状態に戻す。また、入力待ちモードに遷移する。

3.3.6 演算実行イベント

3.3.6.1入力待ちモード、入力処理2モード

 表示エリアが空欄でない状態で、「=」ボタンを選択した場合、下記の演算結果を表示エリアに表示し、入力待ちモードに遷移する。遷移する際、「+、−、*、/、%」ボタンを有効化し、「=」を無効化する。なお、出力結果は、小数となる場合は、小数第4位を四捨五入し、3桁として表示する。

  • 通常の演算の場合
    1. 演算子が「+」の場合
      演算結果=入力処理1モードの入力情報+入力処理2モードの入力情報
    2. 演算子が「−」の場合
      演算結果=入力処理1モードの入力情報−入力処理2モードの入力情報
    3. 演算子が「*」の場合
      演算結果=入力処理1モードの入力情報*入力処理2モードの入力情報
    4. 演算子が「/」の場合
      演算結果=入力処理1モードの入力情報/入力処理2モードの入力情報
    5. 演算子が「%」の場合
      演算結果=入力処理1モードの入力情報%入力処理2モードの入力情報
  • 繰り返し演算の場合
    1. 演算子が「+」の場合
      演算結果=入力待ちモードの入力情報+入力処理2モードの入力情報
    2. 演算子が「−」の場合
      演算結果=入力待ちモードの入力情報−入力処理2モードの入力情報
    3. 演算子が「*」の場合
      演算結果=入力待ちモードの入力情報*入力処理2モードの入力情報
    4. 演算子が「/」の場合
      演算結果=入力待ちモードの入力情報/入力処理2モードの入力情報
    5. 演算子が「%」の場合
      演算結果=入力待ちモードの入力情報%入力処理2モードの入力情報

 また、演算結果の最大、最小の処理は以下とする。

  • 最大:演算結果>3000の場合
    演算結果=3000
  • 最小:演算結果<−3000の場合
    演算結果=−3000

3.4 制限事項

  • テスト項目を記述するのが面倒になることが予想されるため、プログラムに入力できる最大、最小の数値は999.999と−999.999に制限する。また、演算結果の最大、最小は、3000と−3000に制限する
  • ソースコードはブラックボックスとして取り扱うこと(厳密な状態遷移ベースのプログラムとなっていないため)

4.終わりに

 今回は、一定程度の規模感のある問題を出題するため、電卓のプログラムを題材とした問題を出題しました。現実のプログラム開発に近い、かなりの難問です。あらゆる箇所にバグや気付き事項が隠れています。開発技術者、あるいは、品質保証エンジニアの立場で、ぜひ、自分なりのテスト設計を実施し、バグを探してください。

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【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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