東海大学、豊橋技術科学大学、中部大学、デンソーが新型コロナウイルスの感染性を高感度かつ迅速に定量検出できるバイオセンサーを開発。半導体センサーとアプタマー(人工的に合成した核酸分子で、特定の物質に結合する性質がある)を組み合わせる手法を用いており、同手法で新型コロナウイルスを高感度に検出できるのは「世界初」だという。
東海大学、豊橋技術科学大学、中部大学、デンソーの4者は2021年10月21日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染性を高感度かつ迅速に定量検出できるバイオセンサーを開発したと発表した。半導体センサーとアプタマー(人工的に合成した核酸分子で、特定の物質に結合する性質がある)を組み合わせる手法を用いており、同手法で新型コロナウイルスを高感度に検出できるのは「世界初」(ニュースリリースより)だという。今後は、感染症の早期診断に貢献することを目指し、実用化に向けた開発を加速するという。
現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断では、PCR検査や抗原検査などが利用されている一方、それらの検査では、検出されたウイルスの感染力の有無を示す「ウイルスの感染性」が評価できないことが課題となっている。また、PCR検査はウイルスの検出感度は高いものの前処理など医療従事者への負荷が大きく、抗原検査は簡便な検査である一方で検出精度にばらつきがあるなどの課題もある。このため、「ウイルスの感染性」を評価できる、高感度かつ簡便な検出方法が求められていた。
今回のバイオセンサーは、この「ウイルスの感染性」を高感度かつ迅速に定量検出する臨床検査機器向けに開発を進めているものだ。感染のきっかけとなるウイルス表面のスパイクタンパク質を、半導体センサーとアプタマーで検出することができる。半導体センサーは、ウイルス量を電気信号で定量的に計測できるので、高い精度での感染状況の把握や、治療の有効性の確認などへの活用が期待できる。一方、アプタマーは、サイズが小さく、さまざまなタンパク質と選択的に結合する性質を持つのに加えて、設計が容易で短期間で量産できることから 、未知のウイルスの検出にも応用しやすい。
開発の役割分担は以下のようになっている。東海大学は、感染制御と検査の専門医の立場から検査機器全体の開発の方向付けを担う。感度・特異度に優れ、感染性の有無が分かり、操作が簡便かつ迅速な検査機器に求められる仕様と性能、信頼性と精度の確保を目指す。
豊橋技術科学大学は、ウイルス量を電気信号に変換できる半導体センサーの製作と提供を行う。半導体技術に基づく米粒大のセンサーにより、1種類のウイルスだけではなく、症状が極めて似て区別がつきにくいウイルスでも1回の検査で区別できるようにする。
中部大学は、半導体センサーの性能を評価するのに必要な、さまざまな種類のウイルスを準備し提供する。体内に入ったウイルスが増殖の真っただ中なのか、終息に向かっているのかなどの現状認識が可能になれば、隔離解除のタイミングが明確になり、安心した社会復帰の実現が期待できるとしている。
デンソーは、快適な車室内空間を作るための先行研究の一つとして行っていた、さまざまなウイルスやバイオマーカー検出の研究開発の中で得た知見を生かし、より感度高く半導体センサーでウイルスを検出するためのバイオ技術を提供する。これまで培ってきたバイオと半導体の技術を生かし、実用化を目指した開発を加速するとしている。
今後は、開発したバイオセンサーが、新型コロナウイルスの感染性が把握できるだけでなく、PCR検査と同等レベルのウイルス検出感度を持ち、抗原検査と同等レベルの簡便な検査を行えるようにすることを目指しさらに基礎技術を固めていく。併せて実用化に向けた開発も加速する方針だ。
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