ダイハツがシリーズハイブリッド、コンパクトカーの電動化で選択肢広がる自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2021年10月02日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 e-SMART HYBRIDの詳細は現時点では分かっていませんが、燃費性能と価格はいかほどなのか、ロッキーはインドネシアでも販売しているのでハイブリッド車(HEV)も展開するのか、THS搭載の「アクア」を持つトヨタ自動車は「ライズ」のHEV版をどう扱うのか、他の車種への展開をどのように計画しているのか、気になるポイントがたくさんあります。日産自動車のシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」とも比べてみたいですね。

 シリーズハイブリッドのクルマが増えていきそうなので、日産自動車の技術の見せ方が巧みであることを実感します。ワンペダルの運転がラクで楽しいものであることや、シリーズハイブリッドシステムがあらたなEVの形であることなどを盛んにアピールし、e-POWERを搭載した「ノート」が大ヒットしました。モーター駆動ならではの強い回生ブレーキは、見せ方を間違うと「運転しづらい」「強く減速するのが気になる」と受け入れられなかった可能性もあったかもしれません。

 ダイハツの販売店が「ノートと同じですよ」などとお客さんに説明することはないでしょうけれども、電動車の特徴が浸透し、周知されることで、クルマを買いに来る人が「ああ、あんな感じかな」とイメージできるのはプラスに働くと考えられます。

 また、日産自動車 執行役副社長の星野朝子氏は折に触れて「e-POWERのモーターの走りを気に入ってもらえれば、EVへのステップになる」と話します。気に入ったクルマが電動車で、ゆくゆくはエンジンを搭載しないゼロエミッション車も自然と選択肢に入る……という流れは、電動車普及の流れとして理想的だと思います。燃費のいいHEVに乗って給油の頻度が少なくなれば、ガソリンスタンドに行く必要のない生活についてイメージするきっかけにもなるかもしれません。

 選択肢が増えるのは、本当にいいことだと思います。ダイハツの新型ロッキーやe-SMART HYBRIDの続報が楽しみですね。

空飛ぶクルマ、インホイールモーターに新たな技術

 今週は、本田技術研究所と日立グループが、それぞれ研究開発中の技術を発表しました。本田技術研究所は、「空飛ぶクルマ」ともいわれるeVTOL(電動垂直離着陸機)の開発を進めています。日立グループは大幅な軽量化とパワー密度向上を図ったインホイールモーターを開発中です。どちらも、期待を寄せる人が多い分野ですね。

 新しい提案は、本当に実用化できるのか、市場に受け入れられるのかと懐疑的にみられがちです。eVTOLは動力源がバッテリーのみの場合、航続距離は100kmほどにとどまります。eVTOLはクルマよりも早く遠くに行けるとはいえ、100km圏内でどのようなニーズがあるのか議論の余地があります。ホンダはガスタービンも搭載してシリーズハイブリッドで飛ばすことにより、航続距離を400kmまで伸ばします。400kmまで移動できれば、住む場所の選択肢や通勤の在り方を変える可能性があるとしています。

 インホイールモーターはEVの構造を変える技術として期待されていますが、これまで注力してきたNTNはインホイールモーター事業を凍結する方針です。社長の鵜飼英一氏は「将来的には必要になる技術なので開発は続けていくが、時期尚早だった」と述べています。日立製作所と日立Astemoが開発するインホイールモーターは、競合他社が時期尚早とまで言った市場環境を覆せるでしょうか。

 新たな技術の提案は、実用化が難しい分野を刺激し、何かしらの動きをもたらしてくれるようで、ワクワクしてしまいます。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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