工場における生産管理の根幹となる「工程管理」について解説する本連載。第8回は、まず「棚卸し」についての説明を行った後、連載の締めくくりとして、工程管理における現場監督者の役割と活躍の重要性について解説する。
今回は、まず「棚卸し」についての説明を行います。その後、本連載の締めくくりとして、工程管理における現場監督者の役割と活躍の重要性について解説します。
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棚卸しをひと言でいえば、素材、部品、仕掛品、製品などの正確な棚卸資産の残高を知るために、実在庫を調査して、台帳と在庫を一致させる業務です。棚卸しの目的としては以下の項目が挙げられます。
棚卸しは、原材料、仕掛品、半製品、製品などの棚卸資産について、その数量と金額を調べて確定し、同時に現品の破損などの有無を調査して適正な現品管理を行うことをいいます。その手法としては“帳簿棚卸し”と“実地棚卸し”があります。“帳簿棚卸し”は、帳簿記載日、在庫や仕掛かり中のものを数量とその金額を調べて確定する方法です。一方、“実地棚卸し”は、実地に棚卸しを行い在庫や仕掛品の数量が帳簿に記載してある数量と一致しているかを調べる作業を行う方法です。
要するに棚卸しは、帳簿と現品との差異の有無を確認することであり、帳簿が正しく維持されている限り一致するはずですが、とかくその間に多少の差異を生じやすいという現実があります。この差異を見いだして、その原因を追及して改善していくことは、棚卸資産の管理、引当管理、進度管理などにおいても極めて重要です。
棚卸しの方法には、一般的に「一斉棚卸し法(定期棚卸し法)」と「循環棚卸し法(常時棚卸し法)」の2つの方法があります。内容は以下の通りです。
一斉棚卸し法とは、主として期末の決算時などに定期的に全ての在庫品などの棚卸資産に対して一斉に棚卸しを行うもので、定期棚卸し法、決算棚卸しとも呼ばれています。この方法は通常行われている方法でもあり、限られた期間内に棚卸しを実施しなければならないため、事前の準備が必要となります。
理論上では、例えば倉庫を閉鎖して全ての品目について一斉に棚卸しをしなければならないとされていますが、実際には操業に支障をきたしますから閉鎖しないで行うのが一般的です。もちろん、できるだけ短期間に全てを終了する必要がありますが、そのためには多数の人手を要するので、多少とも日常業務を妨げることになってしまいます。
循環棚卸し法は、例えば倉庫内の在庫品を幾つかのブロックに区切り、ブロックごとに棚卸しの日時を決めて順に棚卸しを行う方法です。常時棚卸し法とも呼ばれます。費やす工数が少なくて済むというメリットはありますが、一定時期における全品目の実在庫が把握できないというデメリットがあります。この方法は、入出庫量が一定していて、日常業務に混乱をきたさずに現品管理を強化したい場合に適用されます。倉庫管理の担当者が毎日、数品目ずつを、一定の順序に従って、順番に棚卸しをし、できるだけ短期間に一巡するようにして、その循環を絶えず繰り返す方法です。
一斉棚卸し法(定期棚卸し法)は、決算時などに行いますので、必然的に経理部門の指揮のもとで行うことになります。一方、工程管理の面では、循環棚卸し法(常時棚卸し法)を採用するのが一般的ですが、一斉棚卸し法も生産形態によっては、品目、数量、使用頻度、棚卸し頻度などを検討することによって運用していくことが望ましいと思います。いずれにしても、帳簿と実数とがいつも一致しているような管理制度であれば、帳簿棚卸しだけで済むことが多いですが、実際には簡単なようで難しいのが実情です。
棚卸しでは、実際の在庫と帳簿上の在庫の差異を把握する以外に、在庫品目の見直しや最適在庫量の設定にも注意を払う必要があります。その際に、在庫品を以下の4種類に区分して棚卸しを進めると、転用、廃棄、売却などの判断も容易になります。
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