「1年前と比べて取り組みは進んだか」という設問に対し、2021年調査で「進んだ」とした回答は68.3%と、高い進捗率を示した(図3)。この設問は、2019年調査では61.7%、2020年調査では67.2%が「進んだ」としており、「つながる工場」へと取り組む企業にとっては、着実に何らかの取り組みが広がっている傾向を示している。
ただ一方で、コメントの中には「沈滞気味。投資採算の観点で拡張が難しい。小さく始めるのはよいが小さい分だけ効果も小さく魅力的に見てもらえない」や「手書きチェックシートをタブレット化検討。ただし、工法や工程、基準などを見直して減らすことはしていないため、データ化はするが、作業効率は変わらない」などが挙がっており、成果を出す難しさについての指摘が出ていた。
実際に「成果」について見てみると「期待していた価値が十分に得られているか」という設問に対し「得られている」とした回答は52.9%とようやく半分を超えたところだ(図4)。それでも、50%以下であった2000年調査(48.1%)と比べると徐々にだが、成果を得ている企業は増えつつある。
ただコメントでは「予兆保全的効果はあるものの、全ての機器で実現できてはおらず効果が限定的」や「設備の故障予知に至っていない」「表層的な部分最適にはなったが、包括的で本質的な全体最適へは遠のいた面もある」など思い描いたほどの成果が得られていない状況が垣間見える。また「いつのまにか生産実績の把握だけのプロジェクトとなり、目的を見失っているため効果が得られていない」など、目的がぶれてしまった課題なども指摘されていた。
これらのコメントを見ると、今後はスマート工場化で既に取り組みを進めているところについては、より現実的な成果に結び付けていくことが重要だといえる。さらに、こうした個々の現場で成果を生み出しつつ、より大きなビジョンや目標などをすり合わせ、それらに向けて「小さな成果」を組み合わせて「大きな成果」にしていくことが必要になるだろう。これらを実現するためには、全体のビジョンなどを明確にし、個々の現場での取り組みとは別に全体最適を実現するための仕組みや体制が求められているといえる。
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