一方、自動運転に必要な「認識」のためには、他車両や歩行者など多種多様な物体の存在を検出し、識別することが必要となる。また、動いている物体は将来どのような場所に行く可能性が高いのかという予測の技術も重要になる。菅沼氏は「このように多種多様な物体の動きを含めての認識ができていないと基本的な自動運転は不可能だ。さらに、一般道で信号機の正確な認識、制限速度の把握、落下などの立体物、路面の凹凸の発見なども含めて、車載のセンサーを使って認識していくというのが基本的な考え方となる」と説明する。
さらに、認識だけでなくパスプランニングの技術も重要だ。これによって、搭乗者は自動運転システムに目的地を伝えるだけでよくなり、そこから先は全て自動運転システムが判断して走行できるようになる。最終的な目的地に達するためには、ルート探索のような技術の他、交通ルールへの準拠やマナーの問題、障害物の回避、先行車両への追従などの全てを考慮していく。特に、市街地では駐車車両の避け方なども検討する。こうしたシチュエーションをカバーしていくためには実証実験とともに、シミュレーションなども活用することが重要になっている。金沢大学でも、テストコースから始まり、現在は公道走行を中心に走行試験を進めている。「自律型の機能を高めつつ、一方でインフラの支援を受けながら協調して走行していく。その中で、自律でどこまでやる必要があるのか、インフラにどこまで頼るのか、そのメリットや課題を検討することが中心になっている」(菅沼氏)という。
講演に引き続き行われたパネルディスカッションでも、これらの課題について議論が交わされた。
「自動運転に関して最も重要な技術課題は」という問いに対しては、中部大学の藤吉氏は「判断の根拠、言語的説明」、菅沼氏は「自律走行技術へのチャレンジ/インフラ協調」、Skyの伊神氏は「評価、シミュレーション」、清水氏は「システムと人の共感」と答えた。
さらに菅沼氏は「自動運転の技術を絵に描いた餅で終わらせてはいけない。現実に世の中で使われるシステム、制度設計をしっかりやっていく必要がある。そのためには利用者が安心して使えるシステムであることの実証が重要だ。将来に向けて着実に踏み出していくことが、国が進めている事業だと思う」と述べた。
藤吉氏は「自動運転のための安心・安全の技術を作っていくこと。それとともに、例えば、乗っている人の性格に合わせてカスタマイズされた自動運転をAIによって実現できる、乗っていて楽しめるような自動運転を目指したい」と意欲を見せた。
伊神氏は、Skyが注力している自動運転関連技術として、画像認識やシミュレーターの他、MaaS(Mobility-as-a-Service)向けのクラウド/サーバを挙げて「当社は車載関連だけでも約1400人の技術者がいる。困りごとがあれば声をかけてほしい」と呼びかけた。
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