IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第14回は、Android対抗モバイルOSとして開発された「Tizen」から派生した「TizenRT」を紹介する。
「Tizen」というOSの名前を聞いたことがある方は多いと思う。もともとは2011年、LiMo FoundationというモバイルOS開発団体の活動と、Intelが開発していた「MeeGo」というモバイルOSが一体になったもので、本来はモバイルOSである。要するにAndroid対抗OSと考えれば理解が早い。
もっともそのLiMo Foundationは2007年1月設立だが、その母体となったNECとパナソニック合弁のエスティーモというソフトウェア会社は2006年設立だし、そのエスティーモはもともとNECとパナソニックの2001年の業務提携から始まったことを考えると、2003年のAndroid社設立より早いという見方もできなくはない。しかしながら、現実問題としてTizenはAndroid対抗という扱いだったし、OSとしてリリースされたのはTizenの方が後だから、まぁAndroid対抗と書いても問題はないだろう。
余談になるが、その後LiMo FoundationはTizen Associationとなり、現在はLinux Foundationのプロジェクトになっている(図1)。旧Tizen AssosiationのURLがよく分からないWebサイトになっているのは何ともはや。
さてそのTizen、2016年以降のニュースはこちらにまとまっているが、スマートフォン向けOSとしてはシェアをほとんど握ることができなかった。そこで、車載機器向けに「Tizen IVI」を作り、これは現在「AGL(Automotive Grade Linux)」)となった(図2)。
他にはウェアラブル向け、つまりスマートウォッチ向けOSとして利用されたりしてきたが、2021年7月にTizenを統合する形でGoogleが「Wear OS 3」をリリースするニュースが流れるといった具合に、まぁあまり現状広く使われているとは言いにくい。それでも、冷蔵庫などのホームアプライアンスやスマートTV(Samsungは2021年6月15日、Tizenを引き続きスマートTVに利用すると表明している)などに利用されているから、まだ別に死んだわけではない。2020年10月にはTizen 6.0のPublic M2 Release(Milestone Release 2)が公開され、2021年7月には統合開発環境(IDE)の「Tizen Studio 4.1.1」もリリースされるなど、まだ活発に活動している。
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