“中間”領域の小型モビリティを創る、ヤマハ発動機のCO2削減戦略製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2021年07月23日 08時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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新たな領域の小型モビリティを開発

 こうした目標を達成するために、ヤマハ発動機は「1人当たりの移動に必要なCO2排出量を低減する」という基本方針を定めた。

 具体的な戦略としては、モビリティの小型化はCO2排出量削減効果が期待できることから、四輪車と二輪車、二輪車と電動アシスト自転車のそれぞれの中間に位置する新たな小型モビリティの開発を進めている。例えば、四輪車と二輪車の中間領域に当たるモビリティとしては「MW-VISION」、二輪車と電動アシストの中間にあたる「TRITOWN」などを開発中だ。この他にも、1人乗りモビリティ「NeEMO(ニーモ)」などの開発と実証実験を行っている。

左から「MW-VISION」「TRITOWN」「NeEMO」※出典:ヤマハ発動機[クリックして拡大]

 またモビリティの動力源開発も進める。通学通勤などの都市間交通に最適なEVバッテリーEVを搭載する「E01」(125cc相当)や、都市内交通に適した軽量なEVバッテリーEVを持つ「E02」(50cc相当)などの電動スクーター開発も進めている。

 E01は約60分で電池の最大容量の90%まで充電できる、大容量かつ高出力のリチウムイオンバッテリーを搭載している。また、高剛性クレードルフレームワークの採用によって、バッテリーを車両中心部に配置して、バッテリーの高容量化とマス(重量)の集中化を同時に実現した。二輪車の特性に合わせて開発した、低速大トルクの高回転型空冷ブラシレスDCモーターも搭載しており、低速域での扱いやすさと全速域でのスムーズな加速感を実現する。

E01の外観と詳細※出典:ヤマハ発動機[クリックして拡大]

 E02には軽量かつ高出力の着脱式バッテリー(48V)を採用している。またダイレクト駆動方式のインホイールモーターを採用することで、静かでスムーズな加速感を実現した。リアアームにパワーユニット部品を集約することで、コンパクト化も達成している。

E02の外観と詳細※出典:ヤマハ発動機[クリックして拡大]

 この他にもヤマハ発動機は、既存の小型モビリティのパワートレインを環境負荷の小さなものに置き換える計画や、将来的に環境負荷の低い合成液体燃料が開発された場合に備えて、それらに対応できる新たな内燃機関の開発にも取り組んでいる。

ヤマハ発動機の丸山氏※出典:ヤマハ発動機[クリックして拡大]

 また、これらの環境技術の開発加速を目指して、2022年までに、米国シリコンバレーで環境資源分野に特化した自社ファンド「Yamaha Motor Climate Scrum Fund(仮称)」の設立を目指しているという。運用総額は1億ドル(約109億円)、運用期間は15年間を想定する。

 ヤマハ発動機 取締役上席執行役員 技術・研究本部長の丸山平二氏は「モビリティは元来、移動を便利にするだけでなく楽しさを与えてくれる、人間のパートナーでもある。当社は、カーボンニュートラルの実現を目指しながらより安全で楽しい製品、ソリューションを開発する営みを、ポジティブに捉えている」と語った。

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