国土交通省と経済産業省は2021年5月19日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第5回の会合を開き、業界団体などを対象としたヒアリングの結果をまとめた。
国土交通省と経済産業省は2021年5月19日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第5回の会合を開き、業界団体などを対象としたヒアリングの結果をまとめた。
同検討会は、2030年代半ばまでに乗用車の新車販売を電動車のみとするなどの目標が盛り込まれた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けて、自動車分野での取り組みを検討。計4回の会合には日本自動車工業会を始め、自動車や部品の開発、新車販売や中古車販売、メンテナンス、電動車に関わるインフラなどさまざまな分野の業界団体が出席した。
経済産業省はヒアリングを受けて「自動車はまだまだイノベーションの余地が大きい。技術的な可能性を追求しながら、日本の持ち味を出せる姿を追求したい。カーボンニュートラルは10年、20年がかりのチャレンジになる。一貫した方針を持ってしっかりした政策を打ち出していきたい」と述べている。
→連載「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」バックナンバー
ヒアリング結果の総論としては、政策や財政措置などによって、カーボンニュートラルに挑戦する技術開発やモノづくり、社会実装、人材育成を強力に支援することが求められているとした。また、自動車製造拠点としての日本の国際競争力を維持、強化するため、技術中立性に基づいて多様な技術を誘導する政策推進も必要だとしている。
業界団体からの要請は多岐にわたる。まずは電動車の導入拡大で、買換促進策の長期的な導入、フリートユーザーへの導入誘導、補助条件となる最短保有年数の縮小、新車・中古車を問わない補助などが挙がった。カーボンニュートラルに資する車両を対象とした高速料金や駐車場料金の減免、技術中立性に基づいた燃費規制などの設定、公用車の電動化に向けた車両の選択肢の拡大も求められた。
カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会の委員である稲葉稔氏(同志社大学 教授)は「最近のマスコミの報道では、カーボンニュートラルのために100%EV(電気自動車)に転換すべきという論調がある。欧州でもそういった政策の国があるが、日本が必ずしもこうした流れに追従する必要はないのではないか。エネルギー事情は国によって大きく異なる。欧州は再生可能エネルギーによる発電が比較的多く、フランスのように原子力発電の比率が高い国もあり、100%EVに転換する根拠がある。日本を含め、ほとんどの国は再エネに恵まれていない。しばらくは化石燃料を使わなければならない国も多い。2050年カーボンニュートラルはもちろん達成すべきだが、達成の道筋は国によって異なっていいのではないか」とコメントを寄せた。また、多様な自動車市場に向けて、今すぐEVありきで進むのではなくその地域において最もCO2排出削減効果のあるクルマをグローバルで投入できるよう、多様なカーボンニュートラル技術に誘導する政策推進が必要だと訴えた。
軽自動車や商用車、二輪車など、電動化による価格上昇の影響が特に大きい車両に向けた要望も多く寄せられた。ユーザーに関わる要望としては、軽自動車のユーザー負担軽減のための税制面や補助金などのインセンティブの他、商用電動車の導入補助金や優遇税制の拡充、燃料費支援、商用車の充電インフラ・水素ステーションなどの規格標準化、二輪車の販売店での充電インフラ設置に対する助成などが挙がった。
軽自動車や商用車、二輪車の電動化に取り組むメーカーやサプライヤーからの要望としては、電動車の開発や生産の支援、商用電動車の重量や寸法などの規制緩和や車体架装を考慮した基準化、標準化などがあった。二輪車に関しては、ガソリン車の継続の検討や、電動二輪車の普及における課題解決に向けた継続的な議論や支援などの声も上がった。
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