本連載第71回で、米国の医療AIの市場動向を取り上げたが、今回は医療分野の拡張現実(AR)/仮想現実(VR)と5G/エッジコンピューティングの適用動向を紹介する。
本連載第71回で、米国の医療AI(人工知能)の市場動向を取り上げたが、今回は医療分野の拡張現実(AR)/仮想現実(VR)と5G/エッジコンピューティングの適用動向を紹介する。
2020年3月5日、AT&TとGoogle Cloudは、企業向けネットワーク5G/エッジコンピューティングのソリューションに関して連携することを発表した(関連情報)。両社は、ビジネス課題に取り組む企業を支援するために、AT&TのネットワークとGoogle Cloudの最新技術(例:Kubernetes、AI、機械学習(ML)、データ分析など)、さらにエッジコンピューティングを組み合わせた5G/エッジコンピューティングソリューションのポートフォリオを提供することを目的としている。また、新規ソリューション開発に加えて、独立系ソフトウェアベンダーやソリューションプロバイダー、デベロッパーおよびその他のテクノロジー企業が、AT&T Network EdgeやGoogle Cloudと自社機能を組み合わせた新規ソリューションを開発できるようにするために連携するとしている。
それから約1年4カ月後の2021年7月6日、両社は、5Gネットワークとエッジコンピューティングの技術領域における業種横断的なソリューション提供で、連携を強化することを発表した(関連情報)。連携対象となる技術として、AT&Tのオンプレミス型マルチアクセス・エッジコンピューティング(MEC)ソリューションや、LTE、5G、有線に渡るAT&Tネットワークエッジ機能と、Google Cloudのエッジコンピューティングポートフォリオを挙げている。
特に注目されるのが、Google MapやAndroid、スマートフォンの「Pixel」に加えて、ARやVRなど、現実世界と仮想世界を融合した技術(XR)を利用した機能の拡張だ。具体的な事例として、以下のようなケースを挙げている。
医療分野では、2021年4月26日、グローバル医療機器企業のメドトロニックが、カリフォルニア州ロサンゼルスの医療拡張現実(MXR)機器スタートアップ企業であるサージカルシアターとの戦略的提携を発表している(関連情報)。具体的には、サージカルシアターのAR技術「SyncAR」と、メドトロニックの術中ナビゲーションシステム「StealthStation S8」を組み合わせて、手術室における正確性や効率性を強化するとしている。現時点では、XR技術の院内治療への適用が主流だが、今後、5G/エッジコンピューティング技術基盤が普及するにつれて、在宅治療や健康増進活動への拡大が期待される。
また、AR/VR技術を利用した医療機器の開発促進に向けて、米国食品医薬品局(FDA)が、2020年3月5日に「医療の拡張された現実:医療の仮想/拡張現実に関する最善の評価プラクティスに向けて」(関連情報)と題する公開ワークショップを開催している。
翌2021年3月には、FDAの医療機器・放射線保健センター(CDRH)が、安全で有効性のある革新的な拡張現実ベースの機器に、患者が確実にアクセスすることを目的としたレギュラトリーサイエンス研究の一環として「医療拡張現実機器プログラム」(関連情報)を発表している。
同プログラムでは、レギュラトリーサイエンスにおけるMXR機器のギャップや課題として、以下のような点を挙げている。
その上で、MXR機器プログラムについて、以下のような注力領域を挙げている。
なお、XR技術全般の標準化に関連して、本連載第14回で触れたヘルスケアシステムのサイバーセキュリティ向けに「UL 2900-2-1」プログラムを提供するULが、拡張/仮想/複合現実(AR/VR/MR)技術機器の安全性規格となる「UL 8400」の開発に取り組んでいる(関連情報)。
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