ダッソー・システムズ主催の「SIMULIA」ユーザー向け年次カンファレンス「SIMULIA Community Virtual Conference Japan 2021」において、小松製作所 開発本部 油機開発センタ シニアエキスパートエンジニアの横山佑喜氏が登壇し、「コマツの設計プロセス改革におけるシミュレーション活用事例」をテーマに、同社 油機開発部門における取り組みを紹介した。
ダッソー・システムズは2021年6月15日〜7月9日までの期間、シミュレーションソフトウェアブランド「SIMULIA」ユーザーのための年次コミュニティーカンファレンス「SIMULIA Community Virtual Conference Japan 2021」を開催。そのユーザー事例講演として、小松製作所 開発本部 油機開発センタ シニアエキスパートエンジニアの横山佑喜氏が登壇し、「コマツの設計プロセス改革におけるシミュレーション活用事例」をテーマに、同社 油機開発部門における取り組みを紹介した。
石川県小松市で、1921年に創業した小松製作所(以下、コマツ)は、今年(2021年)で100周年を迎える日本を代表する建設・鉱山機械メーカーだ。同社は建設・鉱山機械の他、ユーティリティー(小型機械)、林業機械、産業機械などの事業を展開し、現在グループとして262社、連結で6万人以上の従業員を抱えている。
コマツの建設機械といえば、ショベル、ブルドーザー、ホイールローダーなどの種類が挙げられ、大小さまざまな建設機械を取り扱っている。その使われ方も、一般土木や鉱山以外にも、道路工事、解体などと幅広い。
このようなフルラインアップの商品展開に加え、建設機械の性能の決め手となる、エンジン、油圧機器、トランスミッション、電子機器といった主要コンポーネントを、自社で開発・生産している点がコマツの特長であり、強みといえる。
また、先進的な取り組みとして、コマツは“建設機械の自動化”の実現に向け、ICT建機の開発にも注力している。ICT建機とは、GNSS(全世界測位システム)や作業機の計測・制御システムを搭載した建設機械のことで、施工の設計面に沿うように建機先端の作業機を自動で制御できる。「このICT建機により、熟練オペレーターでなくても精度の高い施工が可能となる。また、施工の目印となる丁張り(遣り方)の設置や施工中の測量が不要となるため、工期短縮を実現できる」(横山氏)という。
さらに、コマツは建設機械の開発だけでなく、労働者不足やオペレーターの高齢化、安全やコスト、工期に関わる現場課題を解決し、安全に、生産性の高い、スマートな“未来の現場”を実現するソリューション「SMARTCONSTRUCTION(スマートコンストラクション)」を展開している。
従来施工の場合、まず作業員(人)が現場を歩きながら測量し、2次元の図面で施工計画を作成。そして、熟練オペレーターが建設機械を操作し、人が都度、施工状況を確認しながら作業を進め、最後にまた人が検査を行うという流れが一般的である。これに対して、スマートコンストラクションでは、ドローンを用いた測量によって現況の3Dデータを取得。取得した現況の3Dデータと3Dの設計データを使って、施工計画と施工シミュレーションを実施する。そして、3D設計データを用いて、ICT建機で施工を行う。施工の進捗(しんちょく)管理はICT建機から得られる施工データなどを活用し、最後の出来形検査もドローンが活用される。
横山氏は「スマートコンストラクションでは、各プロセスのデジタル化のことを『タテのデジタル化』と呼び、全プロセスがデジタル化されることを『ヨコのデジタル化』と呼んでいる。このタテとヨコのデジタル化により、施工全体の最適化を目指す。これをコマツでは『施工のデジタルトランスフォーメーション(DX)』と考えている」と述べ、タテとヨコのデジタル化が今回の事例講演のキーワードになると説明する。
このように最先端の取り組みにも注力するコマツだが、製品/市場/競争における3つの環境変化に直面しているという。
「製品の変化」については、ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)の課題解決に向けた製品の高度化がある。具体的には、自動化、自律化、電動化、遠隔操作化などへの対応だ。「市場の変化」については、日米欧とは異なる製品ニーズが求められる、拡大するアジア市場への対応。そして、「競争の変化」とは、後発メーカーの追い上げなどによる競争の激化のことを意味する。
こうした環境変化へ対応するためには、複雑化、多様化する製品要求に対して、高品質な製品をタイムリーに開発することが求められ、それが開発部門の課題となっている。そうした課題解決に向けて、横山氏は「現在、構造改革を実現するため、さまざまな改革プロジェクトに取り組んでいる」とし、以降で取り上げる油機開発部門の事例もその1つだ紹介する。
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