スズキの4月のグローバル生産は、前年同月比682.2%増の26万6050台と3カ月連続のプラスだった。グローバル生産の半数以上を占めるインドの前年が0台だったため、グローバル生産は8社の中で最も高い伸び率を示した。インドは4月に変異株によりCOVID-19感染が急拡大したものの、生産は3カ月連続、販売は5カ月連続で増加。インド以外の海外も生産が同4.2倍、販売が同3.9倍となった。その結果、海外生産は同3173.3%増の18万3241台と3カ月連続のプラスだった。
ただ、海外生産は2019年4月の実績には届いていない。加えてシェア6割を握るミャンマーではクーデターにより2021年2月から生産停止が続いているほか、インドでも医療用酸素の不足に対して工業用酸素を提供するため5月1日から生産を停止した。スズキ 社長の鈴木俊宏氏も「インド市場がどのように回復していくのか、明確に生産計画を言えない状況にある」と述べるなど、今後しばらくは不透明な状況が続きそうだ。
一方、国内生産は前年同月比191.4%増の8万2809台と2カ月連続で増加した。半導体不足による部品供給の滞りを踏まえて相良工場や湖西工場など一部の生産ラインの稼働を停止したものの、台数自体には大きな影響は出ていない。国内販売も新型車効果の「ソリオ」のほか、「ジムニー」「スペーシア」「ハスラー」などの好調で、10カ月連続でプラスを維持している。なお、国内生産は2019年の実績を上回ったが、これは2019年に完成検査問題への対策でラインスピードを落としていたことも一因となった。
ダイハツ工業の4月のグローバル生産台数は、前年同月比155.6%増の13万9960台と2カ月連続で増加した。国内生産は同67.5%増の8万2477台と2カ月連続の前年超え。軽自動車が同83.5%増と5カ月連続でプラスを維持したほか、登録車が同44.9%増と6カ月ぶりにプラスへ転じた。これはトヨタ向けにOEM供給する「ルーミー」や「ライズ」の販売好調によるもので、4月の登録車生産として過去最高を更新した。
海外生産は前年同月比943.6%増の5万7483台と2カ月連続のプラスだった。インドネシア、マレーシアともに、前年がCOVID-19感染拡大で大幅に生産を絞っていた反動増が表れている。ただ、2019年と比較すると18.0%減にとどまっており、依然として東南アジアは本格回復には至っていない様子が伺える。
マツダの4月のグローバル生産台数は、前年同月比159.7%増の9万3175台と2カ月連続で増加した。ただ、マツダでは半導体の供給不足によりグローバル生産で約1万4000台の減産影響があったとしており、2019年の台数と比べても2割以上少ない実績。本格回復には時間がかかりそうだ。国内生産は同443.1%増の6万3570台で2カ月連続のプラス。国内生産の伸び率では8社中最大だった。輸出割合の大きいマツダは、前年が各国のロックダウンなどにより需要が急減したことを受けて生産調整を実施。その反動で大きな伸び率となった。もっとも、足元の世界販売は回復傾向を示しており、輸出も同7.2倍と大幅に増加し、オセアニア向けは4月として過去最高を記録した。米国も4月の販売台数として過去最高を更新するなど好調に推移している。国内生産の車種別では、「CX-5」が同7.6倍、「マツダ3」が同5.2倍、「CX-30」が同4.6倍など、主力モデルが大幅増となった。
海外が好調な一方で、国内販売は苦戦している。4月実績は前年同月比10.7%増とプラスを確保したものの、コロナ禍での低水準だった前年実績を踏まえると好調とは言い難い。販売の車種別では2019年10月発売のCX-30が新型車効果の反動で3割近い落ち込みを見せたほか、マツダ3も前年同月比で4割超のマイナスで国内市場での厳しい状況が伺える。
好調な国内生産に比べると、海外生産は伸び悩んでいる。前年同月比22.5%増の2万9605台と2カ月連続で増加したが、伸び率は8社の中で最も低かった。要因は中国で、前年のコロナ禍からの回復特需に対する反動や中国専用モデル「CX-4」の減少により、同24.9%減と2カ月連続のマイナス。減少幅も日系メーカーで最大だった。一方、メキシコやタイは前年がCOVID-19感染拡大で生産停止を余儀なくされたため大幅増となった。
三菱自動車の4月のグローバル生産は、前年同月比126.1%増の7万7916台と2019年8月以来20カ月ぶりにプラスへ転じた。ただ、2019年4月と比較すると23.5%減であり、三菱自の厳しい状況はなお続いているといえる。国内生産は同127.1%増の3万5120台と、13カ月ぶりに増加した。前年がコロナ禍で伸び悩んだことで主力モデルの「デリカD:5」の販売が同2.8倍と大幅に伸長したほか、「エクリプスクロス」のプラグインハイブリッド車の純増もプラス要因となった。輸出も前年がコロナ禍で急減した北米などの反動により、同2.8倍と高い伸びを示した。
海外生産も前年同月比125.2%増の4万2796台と2カ月連続のプラス。主力拠点のタイが同118.6%増、インドネシアが同350.7%増など、東南アジアが大幅に増加した。さらに中国も同26.9%増と、日系メーカーの中では最も大きな伸び率となった。
半導体不足の影響が深刻化しているのがスバルだ。4月のグローバル生産台数は、前年がCOVID-19感染拡大で生産停止を余儀なくされたため、前年同月比190.6%増の4万3330台と4カ月ぶりに前年実績を上回った。ただ、日米ともに半導体不足を受けて生産停止を実施したことで、2019年の台数との比較では半数にも満たなかった。なお、4月は10日から群馬製作所矢島工場で操業を停止したほか、海外唯一の生産拠点である米国インディアナ州のスバル・オブ・インディアナ・オートモーティブでは19日から生産を停止した。その結果、4月の半導体不足による減産影響は約2万5000台まで膨れ上がった。
生産が逼迫(ひっぱく)している半面、国内外の受注は非常に好調だ。国内では「レヴォーグ」の新型車効果に加えて、主力モデルの「インプレッサ」も健闘している。国内以上に好調なのが米国で、「フォレスター」「アウトバック」「クロストレック(日本名:XV)」などがけん引し、4月の米国販売として過去最高を更新した。このまま減産が長引けば、特に米国では在庫不足により販売機会を逸する事態にも発展しそうだ。
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