エンジンシステムなど全面アップデートしたMOMO7号機、2021年夏打ち上げへ宇宙開発

インターステラテクノロジズは2021年6月1日、観測ロケット「MOMO7号機(「ねじのロケット」)」の機体が完成し、同年夏の打ち上げを目指すと発表した。既存のMOMOシリーズの打ち上げ実績を踏まえて、エンジンシステムなどを全面的にアップデートした。

» 2021年06月02日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 インターステラテクノロジズは2021年6月1日、観測ロケット「MOMO7号機(「ねじのロケット」)」の機体が完成し、同年夏の打ち上げを目指すと発表した。既存のMOMOシリーズの打ち上げ実績を踏まえて、エンジンシステムなどを全面的にアップデートした。

エンジンシステムなど4点を改良

 MOMO7号機は当初2020年7月の打ち上げを予定していたが、エンジンの点火器動作などに不具合が見られたため延期したという経緯がある。加えて、それ以前の機体でも打ち上げ延期や宇宙空間未達などが続いており、こうした事態を受けてインターステラテクノロジズは、エンジンのほか各コンポーネントを全面的にアップデートする改良計画を発表していた。2021年夏に打ち上げ予定のMOMO7号機は、こうした改良を反映した初の機体となる。

 計画において主な改良対象となったのは「エンジンシステム」「機体艤装(ぎそう)」「アビオニクス」「アビオニクス(電子機器)」「地上支援設備」の4つ。

 エンジンシステムは打ち上げの信頼性向上を目的に、点火器やインジェクター(推進剤噴射器)、エンジンノズルについて改良を加えた。点火器は形状設計や燃料材質を改善することで、燃料の搭載量が1.7倍になった。また、2つある点火器のうち片方の動作だけでも正常な着火を可能にしているほか、点火器の作動検知機能を強化することで誤検知率を低減している。

点火器やインジェクターを改良※出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

 MOMO5号機打ち上げ時に破損したエンジンノズルについては、材料を損傷が拡大しにくいSFRP(シリカ繊維強化プラスチック)に変更した上で、アルミ素材の外筒でノズル部分を保護することで対策した。

エンジンノズルの改良も実施※出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

 実際に、こうした改良点を加えたエンジンシステムの燃焼実験をさまざまな条件下で29回実施しており、いずれの場合でも正常に動作することを確認しているという。また、インターステラテクノロジズが開発したエンジンでは最長となる143秒間の燃焼にも成功したという。これは、MOMOの飛行時燃焼時間である119秒の1.2倍に相当する時間である。

改良後のエンジンシステムを用いた燃焼実験も実施※出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

アビオニクスに新規SoCを採用

 機体艤装は将来的なMOMOの量産化を見据えるとともに、高頻度の打ち上げにも対応し得る設計に変更した。

 具体的にはバルブや配管をユニット化して、組み立て作業の効率化を図った。従来の設計と比較して約20%の工数を削減できる見込みだという。加えて、機体外部の配管取り外し作業を不要化したほか、高所作業でのオペレーションを削減することで打ち上げ時の運用性を向上させた。

バルブや配管をユニット化※出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

 アビオニクスについては飛行経路制御の精度向上と耐故障性の向上を目的とした改良を実施した。内部制御処理の時間を10万分の1秒単位で管理して、誘導計算や制御処理の実行時刻を正確に管理する。

 また、アビオニクスには新規採用したSoCを搭載しており、高性能なI/O処理を実現してソフトウェアを簡素化するとともに、冗長性を向上させて機内各部間での通信の高信頼化を図っている。新規SoCの性能は、スマートフォンに搭載されているものと同等だという。新規SoCの採用によって部品点数も削減でき、製造や検査の容易化、工数削減が可能になった。このほか、アビオニクスの機体設置作業を容易化して工数を削減するなどの工夫も盛り込んでいる。

新規SoCを採用したほか(左)、工数削減を実現するための工夫などを取り入れた(右)※出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

 地上支援設備については、設備刷新で耐候性やメインテナンス性を向上させたことで、機体打ち上げ前の設備点検や整備作業を大幅に短縮化することに成功したという。

機体打ち上げ前の設備点検を短縮化※出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

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