それでは、JIS製図に基づく3D CAD設計の最初のステップとして、「正面図」について説明します。
3D CADを使って設計する場合、2D図面をベースに3D設計することもありますが、そのほとんどは3Dで設計を行ってから、2D図面を作成していると思います。このとき重要になるのが「2D/3Dモデルの“正面”はどこか?」という点です。
JIS Z8315-1:1999 製図−投影法−第1部:通則 3.4 主投影図(principal view)では、“対象物の主要な特徴を表す図形”のことを「主投影図」と表現していますが、これは正面図のことを意味します。
つまり、主投影図(正面図)には、設計者が考える“設計意図”が示されている必要があります。正面図を見れば、このモデルがどのような役目を果たす(機能を有する)ものなのかが一目で理解できるということです。3D CAD設計においてもこの考え方に基づき、図面を描くことが求められます。
では、どうやって正面を決めるのでしょうか。いくつかの例を紹介します。
六角穴付きボルトを単体で考えた場合、その機能を示す“向き”とは、ネジ頭部が見える向き(図1)ではなく、ネジの全長が見える向き(図2)だといえます。
では、六角ナット単体ではどうでしょうか。この場合、六角形に見える向きが最も機能を表している向きとなります(図3)。
続いて、V字ブロックについて考えてみましょう。V字ブロックとは、丸棒(円筒)形状部品の固定や精度を測定する際に用いられる治具のことです。利用イメージを図4に示します。
では、V字ブロックの機能を最も表している向きはどこでしょうか。図5に示した特徴的な形状が分かる向きが“正面方向”となります。
このように、3D CADで3D図面を設計する際は、基準になる正面を決めることが重要です。例えば、SOLIDWORKSではスケッチ平面を、「iCAD SX」では組み立て平面を決めることから3D設計を始めるように、3D空間上の設計においても基準の3平面を決めることが“設計の基本”になります。
以上、今回は正面図(モデルの正面の重要性)について取り上げました。次回は、たびたび登場する3平面について、2D/3D設計でその基礎となる「第三角法」の説明と、アセンブリ設計からパーツ設計へ展開する際のモデルの向きに関する考え方を、JIS製図の知識を交えながら解説していきます。お楽しみに! (次回へ続く)
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