塗装ラインの情報を一括管理、川口スプリングとB-EN-Gが共創で製造マネジメントニュース

川口スプリング製作所とビジネスエンジニアリングは2021年5月26日、塗装ラインの情報を一括管理する「KS-MICS」を同年6月1日に発売すると発表した。「KS-MICS」のベースにはB-EN-GのIoT基盤「mcframe SIGNAL CHAIN」が採用されており、両社による協業で実現した。

» 2021年05月26日 13時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 川口スプリング製作所(以下、川口スプリング)とビジネスエンジニアリング(以下、B-EN-G)は2021年5月26日、塗装ラインの情報を一括管理する「KS-MICS(Kawaguchi Spring Manufacturing Internet of Coating System)」を同年6月1日に発売すると発表した。「KS-MICS」のベースにはB-EN-GのIoTパッケージ「mcframe SIGNAL CHAIN」が採用されており、両社による協業で実現した。

情報が分断されていた塗装ライン情報を一元的に把握

photo 川口スプリング 代表取締役の鬼塚博幸氏

 川口スプリングでは、祖業であるばね製造に加えて、塗装ラインの構築などのラインビルディング事業を主力としている。塗装ラインは自動化が進んでいるものの、安定した品質の塗装を行うためには、それぞれの機械の安定した稼働に加え、温度や湿度などの環境情報を見極め、きめ細かく設定変更を行うことなどが求められる。しかし、従来は各機器でそれぞれの環境情報や稼働情報は確認できるものの、塗装ラインの各工程における情報や環境情報を一元的に把握できる仕組みはなかった。

 川口スプリング 代表取締役の鬼塚博幸氏は「大手企業であれば、自社内で独自の情報管理の仕組みを作ることもできるが、塗装を担うのは中小製造業も多くある。独自の情報システムを構築することは難しいこれらの企業に対して、一元的に情報を把握し、遠隔監視や遠隔制御ができる仕組みを作れないかを考えた。ただ、独自で最初から川口スプリング内で作ることが難しく協業先を探していた」と語る。

photo B-EN-G 取締役社長の羽田雅一氏

 そこで、展示会などで情報収集をする中で出会ったのがB-EN-Gである。B-EN-GではERP(Enterprise Resource Planning)システムのシステムインテグレーションや、独自の製造業向けERPシステム、IoT関連システムなどを提供してきたが、ITの役割として従来の効率化から、新たなビジネス価値創出を目指した共創型モデルへのシフトを描いていた。

 B-EN-G 取締役社長の羽田雅一氏は「製造業におけるITの役割は、当初はERPなどにより効率化を進める役割だった。それが、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用し自社の競争領域の差別化に使うように変わってきた。これからはさらに、サービス化など新たな価値創出に活用しビジネスモデル変革を進める形となる。新たな価値創出やビジネスモデルの変革を実現するには、共創を進めていく必要がある」と役割の変化について語っている。

 こうした両社の動きがかみ合って協業へと進み、塗装ライン情報の一元管理を「KS-MICS」の実現に至ったという。

塗装ラインに特化したデータを見える化

 両社の共創で実現した「KS-MICS」は、基本的にはIoTを活用する上で、情報を取得し蓄積し、稼働モニタリングを行うまでの一連のシステムをパッケージ化したB-EN-Gの「mcframe SIGNAL CHAIN」をベースとしている。ここに、川口スプリングの塗装ライン構築のノウハウを組み込み、どういうデータをどういう基準で取得し、どのように見せていくのかというものをテンプレートとして加えたものとなる。

 具体的には「塗装ライン全体の稼働状況の監視と分析」「塗装ライン各装置の状態監視と分析、アラート発報」「設備PLCの設定情報の蓄積とオフィスからのオフラインでの設定変更」の3つの役割を果たす。同システムを活用することで、設備稼働率向上と施設全体の安全性の監視、設備の予防保全などを行えるという。

photo 「KS-MICS」の概要(クリックで拡大)出典:川口スプリング

 既存の塗装ラインの見える化システムとして導入することも可能だが「基本的には新設ラインでライン構築と同時に見える化システムを入れるケースが多いと考えている」(川口スプリング 社長室 橋口健太郎氏)。また、現在先行的に試験導入しているケースでは、オンプレミスでの構築だが「クラウドにも対応している」(橋口氏)。料金体系は基本的に構築時の一括型を予定している。塗装ラインの規模や複雑さなどにより条件は大きく変わるが「最低価格は500万円くらいからを想定している」(橋口氏)。

photo 「KS-MICS」の画面イメージ(クリックで拡大)出典:川口スプリング

 川口スプリングではまず「KS-MICS」を3年間で30社に導入することを目指す。さらに「KS-MICS」をベースにしたデータサービスなどへの拡大を計画する。収集されたデータを顧客企業と共有し遠隔から塗装品質歩留まり向上支援サービスを提供することを計画する他、継続的なリアルタイムモニタリングにより、予防保全や事前対応の強化などを進めていく。

 一方、B-EN-Gでは川口スプリングとの継続的な共創により塗装業界に最適な機能追加を支援するとともに、他の企業や業界との共創モデル構築に取り組む。「中小企業などで課題が明確化されていても、独自で新たなサービス構築やシステム構築が難しい場合は非常に多い。これらを支援することで、新たな価値構築やビジネスモデル変革を支援していく」(B-EN-G ソリューション事業本部 副事業本部長 デジタルビジネス本部長の志村健二氏)。

≫「製造マネジメントニュース」のバックナンバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.