報道陣との質疑応答では、東原氏が小島氏に期待する役割や、小島氏が社長兼COOとしてどのような取り組みを進めていくかについて質問があった。
東原氏は「先日買収を発表したグローバルロジック(GlobalLogic)と、エネルギーやインダストリー、ライフなどといった各分野との接点を強化し、シナジーを出していく役割を担ってほしいと考えている」と語る。これを受けて小島氏は「これまで推進してきたアセット改革を基盤として固めた上で、グローバルロジックのバリューアップなども含めて徹底的にスピードを上げてやっていく。事業の出し入れ的なものは大体終わっており、今日立に残っているのはデジタル化、情報化、ソフトウェア化に舵が切られていく分野だ。その中でわれわれは、社内で大きな割合を占めるITセクターの力を借りて、デジタル化でさらに先にいく、早くやる、ということに集中していきたい」と説明する。
小島氏が強調する徹底的なスピードアップを実現する上で重要となるのが「リーダークラスの考えをそろえること」だという。「徹底的に議論した上で、リーダークラスの考えがそろえば後は早い」(小島氏)。
日立の成長けん引役として期待されているLumada事業だが、同時期に発表されたGEの「Predix」などと比べて厳しい見方をする向きも多かった。小島氏は、現時点でLumada事業が順調に成長している要因について「今あるアセットをうまく使うことが重要だったと考えている。日立はITのSIを行うリソースに強みがあり、ここから入るべきと考えた。しかし、これらのSIが競争入札的な受け身の事業だったところを、こちらからデータの活用などを提案する協創(Co-creation)という概念でSI事業を大きく変えていくことで、日立がLumadaで戦っていけるようになった」と説明する。「これからは、日立の持つさまざまな製品事業に広げていくことが、Lumada事業を次のステップに上げるために必要になるだろう」(同氏)。
また、徹底的なスピードアップに向けて変えていきたいこととして「研究開発」と「起業家精神」の2つを挙げた。小島氏は「アセットがそろってきた以上、これからは安定的に、オーガニックに、自分の力で成長する必要があり、そのスピードが求められている。そこで最も重要なのが研究開発だ。コアになるテクノロジーは、自分の力で切り開いていかなければならないと強く思っており、もう一度研究開発に力を入れていきたい」と語る。また、起業家精神については、「日立の基本精神である『和』『誠』『開拓者精神』は、典型的な起業家精神だ。最近はかなり良くなってきたが、これをさらに高揚させていきたい。スピードを上げるには、それが一番の近道だ。失敗を恐れずどんどん挑戦していける会社にしていきたい」(小島氏)としている。
日立は2022年度から始まる新たな中期経営計画を策定しているところだが、そのために新たな経営体制の構築も求められることになりそうだ。小島氏は「日立にはネーチャーの違う事業が3つある。ITと、鉄道やパワーグリッドのような大型受注案件が絡む事業、自動車やインダストリーなどの中量産品事業だ。シンプルに軸のそろった経営を進めるために、CEOの東原氏としっかりと議論していきたい」と述べている。
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