ストラタシスが産業向け製品ポートフォリオ強化、新たに3Dプリンタ3機種を発表3Dプリンタニュース(1/3 ページ)

ストラタシス・ジャパンは、産業用途向け3Dプリンタの製品ポートフォリオを拡充し、新たにDLP方式を採用する光造形3Dプリンタ「Stratasys Origin One」、大型パーツ造形を低コストで実現するFDM方式3Dプリンタ「Stratasys F770」、量産向けSAFテクノロジーを搭載する粉末床溶融結合方式3Dプリンタ「Stratasys H350」の3機種を発表した。

» 2021年05月10日 16時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 Stratasysの日本法人であるストラタシス・ジャパンは2021年5月10日、製品開発プロセスにおける各種アプリケーションを網羅すべく、産業用途向け3Dプリンタの製品ポートフォリオを拡充し、新たにDLP(Digital Light Processing)方式を採用する光造形3Dプリンタ「Stratasys Origin One」、大型パーツ造形を低コストで実現する熱溶解積層(FDM)方式3Dプリンタ「Stratasys F770」、量産向けSAF(Selective Absorption Fusion)テクノロジーを搭載する粉末床溶融結合(PBF:パウダーベッドフュージョン)方式3Dプリンタ「Stratasys H350」の3機種を発表した。

P3テクノロジー搭載のDLP方式3Dプリンタ「Origin One」

 Origin OneはDLP方式の光造形3Dプリンタで、Stratasysが2020年12月に買収を発表したOriginのブランドを冠する初めての製品となる。独自の「Origin One P3(Programmable PhotoPolymerization)テクノロジー」によって高品質かつ高精細な造形物を、高速に出力できるのが特長だ。

 P3テクノロジーによる造形プロセスでは、新しいレイヤー(層)を生成する際、タンク底面に設置されたメンブレンとUVガラスとの間を“空圧”でコントロールすることで液剤応力を低減し、造形面とメンブレン表面を精度良くスピーディーに引き離す「空圧分離メカニズム」を採用する。連続造形とは異なり、物理的にメンブレン表面から造形面を剥離するため、他のDLP方式光造形3Dプリンタのように、UV硬化反応を遅らせるデッドゾーン(酸素の層)をわざわざ作り出す必要がないという。また、P3テクノロジーによる造形プロセスでは、20個以上のセンサーを用いて、温度、湿度、UV露出などの主要なパラメータを監視/制御することで、高速かつ高品質な造形を実現するとしている。

DLP方式を採用する光造形3Dプリンタ「Stratasys Origin One」 DLP方式を採用する光造形3Dプリンタ「Stratasys Origin One」 ※出典:ストラタシス・ジャパン [クリックで拡大]

 造形スピードは、従来のSLA(Stereolithography Apparatus)方式を採用する光造形3Dプリンタと比較して100倍以上高速だとし、1時間で最大100mm(Z軸方向)の造形を実現し、パーツ製造のリードタイム短縮に貢献する。最大造形サイズは192×108×375mmで、積層ピッチは25〜200μm。材料を硬化させる際に用いるUV光源には、4K DLPプロジェクタを採用する。筐体サイズは497×519×1137mmで、重量は72.5kg。

3Dプリンタの量産適用における各種課題を解決する「Stratasys Origin One」 3Dプリンタの量産適用における各種課題を解決する「Stratasys Origin One」 ※出典:ストラタシス・ジャパン [クリックで拡大]

 同社は、Origin Oneによって3Dプリンタの量産適用の阻害要因として挙げられる造形スピード、幅広い材料への対応、造形品質といった課題の解決を図る。Origin Oneで使用可能な材料はパートナー企業(BASF、DSM、Henkel)と共同開発したもので、エラストマー(ゴムライク材料)、ハイテンプ(高耐熱材料)、標準材料、メディカル(デンタル向け材料)、タフ(高強度材料)の5つをラインアップ。最高285℃の耐熱性を誇るもの、最大70J/mの衝撃強度を備えるもの、最大90MPaの引張強度を実現するものなど、豊富な高性能材料を取りそろえる。また、他の3Dプリンティング技術や従来の加工方式(切削)と比較して、パーツ製造のリードタイムに優位性があることに加え、1パーツ当たりのコストも大幅に抑えることができるとしている。

「Stratasys Origin One」の主な仕様 「Stratasys Origin One」の主な仕様 ※出典:ストラタシス・ジャパン [クリックで拡大]
「Stratasys Origin One」の造形サンプル 「Stratasys Origin One」の造形サンプル ※出典:ストラタシス・ジャパン [クリックで拡大]

 造形品質については、仕上がりはきれいだが強度を出しづらいPolyJet方式と、強度はあるが表面の仕上がりが粗くなるFDM方式の弱点を補完し、射出成形レベルのパーツ品質(産業グレードの精度、表面仕上げ、機械的特性)を確保しているという。表面粗さを2μmRaまで軽減し、±25μmの精密な公差を実現する。なお、実際にOrigin Oneで出力した造形物は他の光造形3Dプリンタと同じように、洗浄と二次硬化処理が必要となるが、これら後処理も極めて簡単に行えるとのことだ(それぞれ別の装置で処理する)。

 Origin Oneは、射出成形による1000個程度のパーツ生産の代替として、最終製品/最終パーツの量産に活用できるという。主なターゲットは航空宇宙、自動車、消費財、防衛などの産業領域の他、医療、ツーリング(治具)、歯科などを見込む。Origin Oneの受注および出荷開始は、2021年度第3四半期以降を計画している。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.