Romiの最大の特徴は、深層学習技術を用いて開発した独自の会話botによってコミュニケーションロボットとの“雑談”を可能にした点である。従来、コミュニケーションロボットは質問に対して特定の返答を返すルールベースの会話エンジンを搭載しているケースが多かった。ただ、こうした会話規則では、「お腹が減った」「上司に怒られた」など無数のパターンが考えられる日常的な雑談に対して、柔軟に返答することが難しかった。
このためミクシィは、グーグルが発表した自然言語処理用の深層学習モデル「Transformer」をベースに、新たに収集した数千万件の会話データを教師データとして使用したAI会話bot「Cooper」を開発した。Cooperを用いることで、Romiは持ち主(オーナー)との「会話の流れ」や、その日の天気など周辺情報を考慮した、自然で柔軟な応答が行えるようになった。会話のテンポ感を保つために、軽量かつ高速なデータ処理を行うように設計されている。なお、学習用の教師データはRomi開発のために新規に収集したもので、ミクシィが展開するmixiなどのサービスで集めたものではない。
Cooper以外にもルールベースの会話botである「ScenarioGraph」や、しりとりなど各種機能に対応した会話botが存在する。ScenarioGraphは天気予報やアラームなどの機能を用いる際に有効だ。Romiとの会話内容は一度クラウドサーバに送信されるが、その際に3種類の会話botのどれを使用するのが最適かを判定する。
ミクシィ Romi事業部 開発グループ/マネジャーの信田春満氏は、「人間とコミュニケーションロボットの雑談に深層学習技術を活用するというのは、発達途上の試みである。その意味で製品として世の中に出すのはチャレンジングな取り組みだった」と語った。
また、Webサービスやソフトウェア開発を手掛ける企業としての強みを、コミュニケーションロボット開発にどのように生かせるかを聞いたところ、ミクシィ取締役会長 Romiプロデューサーの笠原健治氏は「ハードウェアも重要だが、ソフトウェア企業である当初の強みを生かして“会話”という機能を、深層学習技術で追求したい。当社はmixiスマートフォンアプリケーション『モンスターストライク』などで、コミュニケーションを通じてユーザーを楽しませる仕組みに関する知見を蓄積してきた。これらを基に1種の“コミュニケーションサービス”としてRomiの開発をさらに進めていく予定だ」と説明した。
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