また、リバースエンジニアリングによる模倣の潜在的な収益の損失は、実際の収益と同じか、それを上回ることも考えられる。英国Vanson Bourneが、2015年にソフトウェアベンダーを対象に行った調査では、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)に所属する回答者の5分の4以上が、自社のソフトウェア製品がリバースエンジニアリングの被害について懸念していたことが分かっている。模倣防止対策についてもソフトウェアビジネスにおいて必要な戦略の構成要素となり、ビジネスリスクを軽減する上でも重要な役割を果たすのは間違いないだろう。
そして、サブスクリプションに移行したソフトウェア企業が利益率を向上させるためには、積極的なマーケティング活動と、数年間の財務指標の低下に耐えうる資金力に加えて、戦略的なアップセルとクロスセルの実現によって、顧客単価を引き上げるアプローチが必要だ。そのアプローチこそ、ソフトウェアを収益化させるソリューションが抜群の効果を発揮する要素となるだろう。
Frost & Sullivanによると、ビジネスの規模が拡大するにつれ、ライセンスの発行から製品のアップグレード、マーケティングレポートやコンプライアンスレポートの作成などを自動化することによって、売り上げと顧客満足度の向上、リソースの利用率の改善につながるとしている。また運用を自動化させることによって、継続的に必要となる運用コストを4分の1から3分の1に削減できる。
ソフトウェアビジネスにおいて、自動化を検討する基準はどの程度の運用負荷が適切なのかがよく議論になる。具体的には、注文数が1日10〜15件を超える場合、注文の入力やライセンスの手動発行のオーバーヘッドが発生することになる。そうなると、専任の人員リソースなしでは管理しきれなくなり、コストがさらに膨れ上がることになるため、自動化の必要性が出てくる。
さらに、ソフトウェアの利用状況データを測定してライセンス情報と関連付けることをシステム化できれば、エンドユーザーのコンプライアンス違反の問題を簡単に解決できるようになる。ソフトウェア企業は多くのコンプライアンス違反に対して効果が期待できるだけでなく、顧客に対してライセンスのアップセルのアプローチが簡単になる。そのため、手作業の監査作業に必要なコストや、顧客にソフトウェアの適正な利用を求めるといったお互いに不愉快になるようなやりとりも不要になる。
この要因によって得られる利益(ライセンスのアップセルによる売り上げの増加と、監査にかかっていたコストの削減による効果)は、収益化ソリューションの浸透度合いに応じて年間収益の5〜33%の増加が見込めるようになる。
また、ソフトウェア本体や、アップデート、パッチなどのモジュールをUSBメモリや光ディスクなどの物理的メディアで配布すると多大なコストがかかる。米国Flexera Softwareの調査によれば1件当たり50米ドル(約5400円)になるという。これは、出荷のための各工程やサポートに人的なリソースを大量に消費するだけでなく、収益認識やエンドユーザーの利用開始にも大きな遅れを生じさせることになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.