日立製作所はデジタルソリューション「Lumada」の協創活動を推進する新たなフラグシップ拠点「Lumada Innovation Hub Tokyo」を報道陣に公開。同拠点をはじめとする「Lumada Innovation Hub」の活動を進めるために日立社外から招聘した加治慶光氏と澤円氏も紹介した。
日立製作所(以下、日立)は2021年3月22日、デジタルソリューション「Lumada」の協創活動を推進する新たなフラグシップ拠点「Lumada Innovation Hub Tokyo」を報道陣に公開するとともに、同拠点をはじめとする「Lumada Innovation Hub」の活動を進めるために日立社外から招聘した加治慶光氏と澤円氏を紹介した。JR東京駅に直結するLumada Innovation Hub Tokyoは同年4月15日に活動を開始する予定で、2021年度半ばをめどに顧客やパートナーとともにLumadaの協創活動を進めるスペシャリスト約100人を集結させることを目標としている。
Lumada Innovation Hub Tokyoは、JR東京駅の日本橋口と直結するサピアタワーの17階に入居する(16階は日立メンバーのオフィスフロア)。JR東京駅は、東京の中核となるターミナル駅であるだけでなく、日立の中央研究所がある「協創の森」(東京都国分寺市)やスマート工場化で先進的な取り組みを進めている大みか事業所(茨城県日立市)をはじめ、日立の各拠点と電車1本で直結する好立地にある。この地の利を生かして、顧客やパートナー、スタートアップ企業など業界を越えたステークホルダーをバーチャルとリアルでつなぎ、知恵やアイデアを掛け合わせることで価値創出を活性化する拠点として活用していくことになる。
Lumada Innovation Hub Tokyoの開設に合わせて、アフターコロナを見据えたニューノーマル社会でのイノベーション創出の在り方を「業界・空間・時間を超え、知恵やアイデアをつなぐ」ことと再定義し、その実現に向けたサービス・協創空間をLumada Innovation Hubとして体系化していくことになった。これらLumada Innovation Hubの取り組みを推進するため、グローバルでのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進やエコシステムのコラボレーションで多くの実績を有するキーオピニオンリーダーとして招聘されたのが加治氏と澤氏である。
加治氏は、日本コカ・コーラ、タイム・ワーナー、ソニー・ピクチャーズ、日産自動車、オリンピック・パラリンピック招致委員会、首相官邸国際広報室などで業務を歴任した後、アクセンチュア日本法人のチーフ・マーケティング・イノベーターとして、ブランディング、イノベーション、働き方改革、SDGs、地方拡張などを担当。現在は、AI(人工知能)スタートアップのシナモンAI 取締役会長兼CSDO(チーフ・サステナブル・デベロプメント・オフィサー)や鎌倉市スーパーシティアーキテクトなどを務めている。日立では、Lumada Innovation HubのSenior PrincipalとLumada Innovation Hub Tokyoのセンター長に就任し、Lumada Innovation Hubの運営、コンサルティングサービスの提供、人財育成をリードすることになる。加治氏は「2011年3月の東日本大震災では、当時勤めていた内閣官房で対応に追われた。そのとき感じたのは、テクノロジーと人と自然、これら3つのものがともに理解し、ともに協創していかなければ新しい人類の未来はないのではないか、ということだった。Lumada Innovation Hubでは、日立の総合力を生かして新しい未来を創っていきたい」と語る。
一方の澤氏は、日本マイクロソフトの業務執行役員としてさまざまな企業のデジタル化の支援に携わってきた。IT業界では、印象的な長髪とともに、そのプレゼンテーションスキルなどで広く知られてきた人物だ。現在は、圓窓の代表取締役として、数多くの企業や自治体、スタートアップの顧門を兼任している。日立では、Lumada Innovation EvangelistとなりLumada Innovation Hubを含めたLumada関連施策について社外に向けた発信をリードしていく役割を担っていく。
澤氏は「2020年、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックで世界はリセットされた。既にデジタルが人類のインフラとなっていることを前提にマインドセットのアップデートが必要であり、その先にイノベーションが生まれてくる。ここでイノベーションとは、『技術革新』ではなく『新結合』であることを重視すべきだ。日立が持つさまざまな『リアル』と、デジタルと言い換えてもいい『バーチャル』の結合によってイノベーションが生み出せる。この結合を生み出す場として、東京駅という物理ハブに、イノベーションのための機能ハブが加わるLumada Innovation Hub Tokyoを『リアルとバーチャルのクロスロード』としていく。さまざまな面白い“たくらみ”ができればと考えている」と述べる。
なお、2021年2月にジョインした加治氏と澤氏だが、Lumada関連の業務を主軸としつつも、加治氏であればシナモンAIや鎌倉市の業務、澤氏であれば企業や自治体、スタートアップの顧門を同時に務めていくことになるという。
日立のLumada事業は順調に拡大を続けており、2020年度の売上高は前年度比6%増の1兆1000億円となる見通し。また、登録ユースケースは1000件を超え、2019年3月発表のソリューションを容易に導入する『Lumada Solution Hub』や、2020年11月発表の多様なパートナーとのエコシステムを構築する『Lumadaアライアンスプログラム』などの施策も展開してきた。
今回のLumada Innovation Hubは、知恵やアイデアを掛け合わせる『つなぐ』ハブとなるものであり、Lumada Innovation Hub Tokyoはそのフラグシップ拠点だ。加治氏と澤氏は、新たなリーダーとして、日立外部の知見をLumadaに取り入れていくことが期待されている。両氏の登用に尽力した日立 理事 サービス&プラットフォームビジネスユニット Chief Lumada Business Officerの熊崎裕之氏は「Lumada Innovation Hubでは、日立から仮想的な距離が遠い人を採用したいと考えていた。その方が、新しいケミストリーが生まれるだろうと思っていたからで、加治氏と澤氏はぴったりの人材だった」と期待を込める。
また、Lumada Innovation Hub Tokyoで行われた会見の冒頭には、日立 執行役専務 サービス&プラットフォームビジネスユニットCEOの徳永俊明氏がリモートで登壇。2021年4月から、Lumada事業の推進役となるITセクター全体の責任者となるとともに社会イノベーション事業を統括することになる徳永氏は「日立は業界を超えてステークホルダーとLumada Innovation Hub Tokyoでつながり、環境、レジリエンス、安心安全といた現代社会が求める価値を実現していく」と強調した。
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