パナソニックは、電力線通信であるPLCの最新国際標準規格であるIEEE 1901-2020に準拠した技術や機能を搭載したICの設計に用いる「HD-PLC4 IPコア」のライセンス供与を開始した。高速化や長距離化を実現するとともに、電力線にとどまらない制御線や同軸線などの既設のさまざまなメタル線も活用できることなどを特徴としている。
パナソニックは2021年3月16日、電力線通信であるPLC(Power Line Communication)の最新の国際標準規格であるIEEE 1901-2020に準拠した技術や機能を搭載したICの設計に用いる「HD-PLC4 IPコア」のライセンス供与を開始したと発表した。通信速度で従来比4倍となる1Gbpsを実現し、より長距離の通信に対応するとともに、電力線にとどまらない制御線や同軸線などの既設のさまざまなメタル線も活用できることなどを特徴としている。2020年までのHD-PLC機器のグローバル累計出荷台数は400万台となっているが、より安価なPLC対応ICの開発が可能な第4世代のHD-PLC4 IPコアの投入を契機にPLCの本格普及期に入ると見ており、2030年までに累計10億個のPLC対応ICの出荷を目標に掲げている。
2000年代前半の製品開発から商用展開が進んできたPLCだが、2015年のマルチホップ技術対応による長距離通信対応と安定化を機に、主に産業用途で採用されるようになっている。その中心軸にいるのが、パナソニックなどが中心となって推進している高速電力線通信のHD-PLCである。これまでは、2010年に発行されたIEEE 1901-2010をベースとする第3世代の「HD-PLC3」が用いられてきたが、IEEE 1901-2010の発行から10年間の改良を反映したIEEE 1901-2020の正式発行により今後は第4世代のHD-PLC4を用いた機器やICなどが展開されていくことになる。
HD-PLC4は、HD-PLC3の標準モードである通信速度250Mbpsを基準として、利用周波数帯域の広帯域化による高速化と、狭帯域化による長距離化が可能になっている。広帯域化は2倍と4倍を選択可能で、それぞれ通信速度は500Mbps、1Gbpsに高速化できる。狭帯域化も2分割と4分割があり、通信距離はそれぞれ標準モード比で1.5倍、2倍となっている。また、マルチホップ機能によって最大1024ノードの広域ネットワークも構築できる。狭帯域化とマルチホップ機能を組み合わせれば10kmクラスの長距離化も可能で、スマートシティー向けの有線通信としての利用も視野に入る。
パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 IoT PLCプロジェクト プロジェクト長 兼 全社PLC推進総括担当の荒巻道昌氏は「今後のPLCの本格的な普及に向けたIEEE 1901-2020に基づくHD-PLC4 IPコアは、ICの製造コストも抑えられるようになっている。Wi-Fiと同じ土台に載せてもらえるレベルになったのではないか」と強調する。
同社はHD-PLC4 IPコアのライセンス提供に向けて、IPコア本体や開発ボード、FPGA実装プラットフォームにとどまらず、アナログフロントエンドや周辺回路に用いる部品、関連ソフトウェアなども提供していく構えだ。「顧客によるHD-PLCの事業化を容易にするための体制を整えた」(荒巻氏)という。なお、HD-PLC4 IPコアは先行的にソシオネクストへのライセンス提供を行う予定になっている。
また、HD-PLCを推進するHD-PLCアライアンスに加盟する16社などパートナー企業との連携による共創やグローバル展開もより積極的に進めたい考えだ。
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