横浜市は、2020年度から一般公用車のうち乗用車はEV、FCV、プラグインハイブリッド車(PHEV)から選ぶことを原則としている。2030年度までに、一般公用車は100%電動車とする目標だ。新しい市庁舎でも普通充電器や急速充電器を合計47基設置。V2B(Vehicle to Building)対応の普通充電器も2基設けた。さらに、ゴミの焼却を行う資源循環局にゴミ焼却発電の電力で充電できる急速充電器も設置した。
また、横浜市内は集合住宅が60%を占めるにもかかわらず、EV所有者の90%が戸建であるという偏りが大きいことから、集合住宅向けの充電設備設置費用を一部補助している。集合住宅向けにカーシェアリングを提供する事業者も対象に含まれる。また、2021年度からは住宅へのV2H機器導入への補助も開始する。
FCVに関しては、市民や市内の事業者向けの導入補助を提供しているほか、2021年4月には市内7カ所目の固定式水素ステーションが稼働する。水素ステーションの整備費用の補助も実施する。
横浜市が課題に挙げたのは、集合住宅での充電器の設置を促進して自宅での充電を容易にすることだ。また、商業施設での充電器拡充や、路上での充電など新たな充電器設置場所の検討も必要だと指摘した。
長野県では、令和元年東日本台風での記録的豪雨で千曲川が決壊するなど大きな被害が発生したことを受けて、2019年12月に「気候非常事態宣言」を発表。県内の全市町村の賛同を得て、2050年のCO2排出量を実質ゼロにする目標や、最終エネルギー消費量を7割削減、再生可能エネルギー生産量を3倍以上に増やすなどの取り組みを掲げた。これに向けて現在は、2021〜2030年度の実行計画の策定を進めている。
まず、自動車を含む交通分野では「EVやFCVで走りたくなる長野県」を目指して、まずは観光客向けにインフラを充実させる。現状では、県内の3割の「道の駅」や国道の一部区間に急速充電器が設置されていない。勾配など地形を考慮してインフラの最適配置を進め、電欠の不安や充電待ち渋滞のストレスを払拭する。2021年度(令和3年度)予算では、県内で発電された再生可能エネルギーの電力を使ったEVの急速充電設備を県有施設に整備するほか、2021年度に更新する公用車を原則全てEVやFCVとする方針だ。
観光地でも、自然公園などでのEVやFCVの優遇、電動バイクのシェアリングなど公共交通機関から目的地までの「2次交通」の充実、目的地での観光内容に応じた効率的な充電などに取り組む。
訪れやすさを重視した短期〜中期的な取り組みは、住みやすさにもつながるとしている。現状では、1人あたりの保有台数が全国で2位となるなど長野県はマイカー依存度が高い。一方で、公共交通における赤字路線の増加とサービス低下、利用者現象の悪循環も起こっている。こうした社会インフラの維持や、高齢者の移動手段確保も課題となっている。
人口減に対応しながら市街地と中山間地で住みやすさを実現するに当たって、市街地ではマイカーに依存せず徒歩や自転車、公共交通を中心に街づくりを進める。中山間地では、EVとV2H(Vehicle to Home)の活用によって災害時もエネルギー供給で自立できること、自動運転などを活用した移動、市街地と往来する公共交通ネットワークによって、自然の営みを守った地域づくりを目指す。
長野県では今後、2030年までに特殊車両を除く全ての公用車を電動車とし、2050年度には公用車全車をEVもしくはFCVとする。課題としては、EVやFCVの車種が限定的である点を挙げた。公務の内容や走行する地域に合わせて軽自動車やバン、四輪駆動車の使用が多いため、現状のラインアップでは公用車の切り替えに制約があるとしている。
また、更新時期を迎える急速充電器への対応など、既存のインフラの維持と更新に向けた支援も求めた。充電利用者の増加やEVのバッテリー大型化が進むことで無料での充電インフラ提供は負担が大きいとし、充電課金システムの統一や制度化が必要だとも指摘した。
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