ウインドリバーは2021年3月3日、5G対応のアプリケーションを迅速に構築するためのエッジクラウドプラットフォーム「Wind River Studio」を新展開すると発表した。併せて同社は、これまでの組み込みOS開発の経験を生かしながら、今後は5Gエッジコンピュータのネットワークを支えるインテリジェントシステムプラットフォームの開発、提供に注力すると発表した。
ウインドリバー(Wind River Systems)は2021年3月3日、5G向けのエッジコンピュータネットワークの構築、管理を容易化するためのクラウドプラットフォーム「Wind River Studio」を新しくリリースすると発表した。併せて同社は、これまでの組み込みOS開発の経験を生かしながら、今後は5Gエッジコンピュータのネットワークを支えるインテリジェントシステムプラットフォームの開発、提供に注力すると説明する。
Wind River Studioは、5Gネットワークを用いるエッジシステムの開発、デプロイ、運用、サービスを容易化する、仮想化無線アクセスネットワーク(vRAN)を構築、管理するためのソリューションである。
Wind River Studio Operator Capabilityは「Studio Conductor」「Studio Analytics」など4つの主要コンポーネントで構成されている。
Studio Conductorは単一のインタフェース上で、複数の5Gエッジネットワークをクラウド上で運用管理できる機能だ。Studio Analyticsはデプロイメント全体のモニタリング、分析、レポート分析機能などを備えている。地理的に離散した各拠点のエッジコンピュータを一元的に把握できる。
この他、AWSやAzure、KubernetesやStarlingXなどのクラウドインフラストラクチャをプラットフォーム上で一元的に扱えるようにした。また、オーケストレーション機能として、簡略化されたエンドツーエンドで表されたブループリントからサービスの全体的な定義を作成できるようにした。ブループリントからはVM(仮想マシン)やコンテナ、構成、主要データを操作することも可能。
このほかコンポーズ機能を使えば、ブループリントに基づいたサービスコンポジションの編集や管理、構成変更なども行える。これらの機能を通じて5Gエッジネットワークの信頼性、可用性、超低遅延、高セキュリティ性を担保するという。
なお、今回リリースするのはオペレーティング業務向けの「Wind River Studio Operator Capability」のみで、開発者向けツールである「Wind River Studio Developer Capabilities」の正式リリースについては2021年の春先を予定している。
調査会社であるガートナーは、2022年までに企業が生成するデータの50%以上はエッジコンピューティングなど、データセンターやクラウド以外の場所で生まれるようになると予測する。また、グローバル企業の75%以上が2022年までにクラウドネイティブな環境下のシステムを、コンテナ化したアプリケーションで置き換え、アップデートするようになるという。
これらの予測を基に、ウインドリバー 代表取締役社長の中田知佐氏は、同社の主軸をこれまで注力していた組み込みOS開発から、5Gエッジシステムネットワークを支えるインテリジェントシステムプラットフォームの開発へと移行すると発表した。
「将来的には、エッジ上のデータをリアルタイムで処理するためには、エッジコンピュータ上にクラウドと同等の処理能力を持たせる必要が出てくるだろう。ここで活躍が期待されるのが、5Gエッジデバイスの開発、デプロイ、運用という各フェーズで直面する課題を解決し得る、クラウドネイティブプラットフォームだ。ITの世界では広く普及しているが、組み込み開発の世界ではまだまだ広まっていない。Wind River Studioを通じて、5Gのグローバル展開加速の流れに参画していく」(中田氏)
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